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父と母③
ある程度話を終え、寮に戻ることにした。
俺は曽根の車に乗せてもらう。
どこかの俺様とは違い、リムジンのような高級感ダダ漏れ車ではない。
ただ、一言言っておくが、決して安くはない車だ。もっと言えば、まぁ一般人には決して買えない車種だけど。
まだあれよりはマシだ。
車内は静かで、10分ほど無言の時が流れた。
窓の外を見ながら俺はポツリと言葉を漏らした。
「…今日は、ありがとう。」
「どうしたの?珍しい。」
「別に俺だって礼ぐらい言う。…お前らがいなかったら母さん今でも窶れてたと思うし。父さんのこともたぶん今でもぐずぐず繋がってただろうし。それでまた借金擦りつけられてさ。だから、その…ありがとう。」
「ふーん。まぁ、可愛い結城君の為ならなんでもしちゃうからね、俺ら。でも、お礼されるのは悪くないな。あっ、そうだ。キスしてくれたらもっと頑張れるかも。」
思いついたように、キスを促してくる。
人が下手に出てりゃいい気になりやがって…。
ニコニコと笑って目を閉じる曽根に、思い切ってキスをした。
これくらいなんてことない。
と思ってたけど、意外と恥ずかしいな。
少しのリップ音が鳴って、すぐに口を離した。
「まさか本当にしてくれるとは。驚いた。」
想像通りの驚いた顔。
目をパチクリしている。
「なんだよ、冗談だったのか?」
「ううん、すごく嬉しい。」
甘く笑った曽根から今度はキスをされた。
ディープで息できないやつ。
「今度はこんくらいのを楽しみにしてるね。」
思いっきり殴ったのは仕方ない。
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