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新歓!!④

ウォーターサバゲーのルールはこれだ。 グループは大体15人〜20人。大将を決め、先に大将に水鉄砲の水を当てた人が勝ち。一度でも水に当たった人は即退場。大逆転もあり得るルールで行われる。 フィールドは3つ。 1.校庭 2.校舎 3.学園内にある森  なぜ学園に森があるのかは置いといて、これであらかたのルールは決まった。審判は風紀委員に務めてもらうことになった。 そして、俺らは運営に回る。案内係やゲームの勝敗の管理等。他の委員会の力を借り、新歓は行われることになった。 因みに夜は、ビッフェ形式のパーティー。俺はこっちの方が楽しみだ。 忙しい1週間も終え、漸く新歓。 その間のセックスについては断固拒否した。殺す気かと言ったら流石にみんな引いてくれた。あいつらにまだ常識が残っていて良かった。 「新入生歓迎会を始めようと思います。まずは…。」 会長の説明を舞台裏で聞く。俺の今日の仕事は案内係。フィールドへの案内はもちろん、トラブル発生時の対処も行う。会長の話が終わり、ゲームへ移行する。 水を掛け合うだけなのに、初めての経験なのかきゃっきゃとはしゃぐ新入生と在校生。御坊ちゃま学校だな、と思いつつ、提案してみて良かったと思った。 「南、何かトラブルはないか?」 「いえ、特には。」 「そうか。」 副会長とタッグを組んで仕事を行なっている。基本無口で何考えているのかは分からないけど、仕事ぶりを見る限りできる漢だ。 本当に、副会長は俺の理想の男なんだよなぁ。   「南?どうした?」 「あっ、いや、なんでもない。」 「…?そうか。」 水を掛け合う高校生。 それも後半になるにつれ、本気に。 …それはただの、ただの、偶然だった。 辺りを見回している最中、胸元に衝撃が走った。 冷たい。 水だ。 びしょびしょに濡れた服。 誰も気付いていないのか、試合は続く。 「南、大丈夫か?」 「あー、ちょっと濡れた。」 副会長が俺の異変に気付き、近寄ってきてくれた。そして、ギョッとした。 「南、その格好は…。」 「…?格好?」 「こい。」 副会長が眉を寄せ、俺の腕を引く。 近場の校舎裏。 はいと渡されたのはジャージだ。 「なんで、大丈夫ですよ。日が照ってるし、すぐ乾く。」 「…透けている。」 「は?」 「我慢がきかなくなる。早く着ろ。」 「透け…?」 自分の胸元を見ると、胸から腹の辺りまで透けていた。バッと前を隠す。 俺は男で、女じゃあるまいし、別にいいだろ…みたいな思考は捨てた。だって目の前の男はこんな公衆の面前で勃っているんだから。まさにギンギンって…。笑えない。 「俺はトイレに行ってくる。」 「俺を襲わないの?」 「襲って欲しいのか?」 ブンブンと首を横に振る。そんな訳がない。 「この前はすまなかった。自制が効かなかった。本当はもっと優しく抱いてやるつもりだったんだ。俺はお前を愛している。だから、今もギリギリの精神で耐えている。」 「なんで、俺を…?副会長は男前だし、それこそ言い寄ってくるやつなんて山ほどいるだろ?」 それは他の連中にだって言える。 なんで俺なんだ。 極上の顔と山ほどの金を持っていて、頭もいいあいつらには女も男も選り取り見取りのはずなのに。 「俺は、一目惚れだ。」 「は?」 「お前が、入学式の日に落とし物を拾ってきてくれた。その時のお前が酷く俺には愛らしく見えた。」 入学式。ああ、緊張しててよく覚えてないけど、そんなことあった気がする。 「え?それだけ?」 「お前は一目惚れしたことがないのか。」 まぁ、あるけど。 そっか、ってならないよ。 俺男だし。 「お前は俺の理想だった。だから、柊の案に乗った。お前を落とす為ならと。しかし今となっては少し後悔している。こんなにも愛おしく思っているのに、自制が効かずお前を傷つけてしまう。そうしたらお前の心は離れて行ってしまうのだろう?」 「副会長…。」

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