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柊楓⑤

「あゔっ…はぁ、はぁ、ゔうっ…。」 なんで、どうして、こうなったんだろう。 分からないけど、気持ちがいい。 それだけで充分なんじゃないのか。 もっと、もっと、気持ちよくなりたい。 もっと、もっと、忘れるくらい、すべてを忘れ去られるくらい。 快楽で満たされたい。 「かいっちょう…。はやく…。」 「ふふっ、まだほぐせてないよ。僕は君に痛い思いをして欲しくはないんだ。」  焦らされる中を。 じっくりと、ゆっくりと。 二本の指で解され、快楽へと誘われる。 尻穴がひくひくと動く。 もっと奥、奥へと強欲に欲する。 「結城、挿れるよ。」 「んんぅ…。」 ぬっぷりと入っていく。 尻孔が広がる。 痛みはない。 そのくらいまでには孔は広げられた。 そして、じゅぷじゅぷと音を立てながら、会長のが出たり入ったりを繰り返す。いやらしい音が響く。その音が自分から発せられていることに、嫌に敏感になる。 自分は今、セックスをしているのだ。 そう気付かされる。 認めたくない。 認めたくないけれど、認めなければならない。 俺は快楽によって、自分の哀しい記憶を消そうとしている。 そして、自らこの快楽を選んだ。 「はぁ、ふぁぁああぁああ。」 甘い声が漏れる度、自分は男をやめたのかと思う。けれど、会長が俺のちんこを握りしめた途端、自分は男であるのだと再認識できる。 「かいっ、ちょお。触って、もっと、ちんこ、触って。」 もっと俺を男であると感じさせてくれ。男の象徴から快楽を感じさせてくれ。 「結城は我儘だね。快楽を欲するのに、自分はメスではなく、オスだと思いたいんだ。それでもいいよ。それでも構わない。いいや、それこそが君だ。結城は女じゃない。男だからこその価値が存在するんだから。ただのメスに成り下がってしまってはつまらない。まぁ、君がメスに成り下がると言うのなら、僕らはその分君のメスの部分を愛してあげるけどね。」 「なにっ、言って…。んぅっ…ひゅぅっ…あぅ、あぁぁ、ぁあっ!!」 「ああ、ごめんね。僕はどうにも話が長いとよく言われるんだ。…柾斗みたいに言葉責めというやつをしてみてもいいけど、今日はやめようか。漸く快楽に抗わなくなったんだから。うんと気持ちよくしてあげる。」 「ひゃうっ…。」 一気に奥につかれると、そのまま音を立てて、出し入れされる。 快楽は終わらない。 終わらないから永遠に感じ続ける。 脳が、身体が、快楽を求める。 もう、戻れない。 たぶん俺はこの先誰かを抱くことが…。 「そろそろイこうか。大丈夫、一緒にイこう。」 「んっ、んンァぁぁぁぁぁぁぁぁ。」 快楽が一気に襲ってくると、そのまま俺はイキ果てた。荒い呼吸が続く中、穏やかに笑う会長の姿を見た。

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