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離婚②

5時を回って、そわそわし出す。 そろそろ帰ってきてもいい時間だ。部屋をぐるぐる回って、携帯を何度も見つめる。何かあればこれに連絡が入る筈。 ガチャ。 ドアの開く音が聞こえた。 急いでドアへ向かう。 母さんは清々しい程の笑顔で現れた。 「母さん?どうだった?」 「離婚、してきた。あの人お金は持ってないから慰謝料は請求出来ないけど、これで借金を払う義務がなくなった。これで、自由になったわ。」 「そっか。それなら、良かった。」 「ええ。もう、関わらないって書類も書いてもらったの。でもね、結城。結城が会いたいならいつでも会って…。」 「母さん。いいんだ。いいんだよ。会いたくもないし、父親とももう思ってない。」 あの日直接会って分かった。あの人はもう父ではないと。それに父さんがいなくても母さんだけで十分幸せだから。 「結城、ごめんなさい。ごめんなさい。」 笑顔から一変。 母さんの表情が曇る。 喜びの半分、悲しみがあって仕方のないのだ。なんたって一度は愛した人との離婚なのだから。 「母さん。」 「なぁに?結城。」 「俺、母さんと父さんが出会って良かったと思ってる。だって、出会わなければ、俺はこの世にいないでしょ?そしたら、俺、こんなに優しい母さんに会えなかったもん。」 「結城…。」 ギュッと力強く抱きしめられる。小っ恥ずかしいけど、でも今日は俺も抱きしめ返す。 「大きくなったわね。」 「大きくなったよ。」 「そう言えば、酒田さんは?」 「あっ、そうだった。下で待っててもらってるの。一緒夜ご飯食べる約束をしたのよ。」 「それなら早く行かなきゃ。」 「そうね。酒田さんに連絡入れとくから、結城は準備してなさい。」 「はーい。」

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