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男の娘の魅力①
朝風呂。
朝早く起き、ランニング後の朝風呂。肩まで浸かって、足を伸ばし、髪も水の中に漬ける。
「んー、今日もいい日になりそう。」
のぼせないうちに風呂から上がり、更衣室まで真っ裸のまま突き進む。今回は襲われないように許可を取ってから風呂に入っている。伸び伸びと1人風呂を楽しめた。
「さて、着替え着替え…。ん?」
服を置いていたロッカーに、服がない。
「あれ、ここに置いてなかったっけ。」
記憶違いではなければここに置いていたはず。念のため、他のロッカーも隈なく探した。
ない。
なかった。
いや、正確には俺の服はなかった。
その代わり、俺の服ではない服が置いてあった。
別に自分の服じゃないから着れないとか、借りるのは悪いから着れないとかじゃない。
「ユーキ君。お風呂あがったぁ?」
「お前の仕業か!早乙女!!」
「えー、なんのことぉ?」
「なんのことじゃない!!このふりふりの服と俺の服変えやがったのお前だろ!」
そう。
目の前にぽつんと置かれた服はピンク色のふりふりワンピース。
着れるはずないだろが。
「早乙女、ふざけんなよ。俺の服返せ!」
「えー、よくわかんなぁいから、開けるね。仕方ないよねぇ?だって、よくわかんないからぁ。ユーキ君の裸見て興奮しちゃってついつい襲っても仕方ないよねぇ。」
「は?いや、ちょっ、入るな。入ろうとするな。」
襖を足で抑え付け、ワンピースを上から被る。意外と力の強い早乙女と襖を開けさせまいと死ぬ気で抑える俺。両者必死の攻防のうえ、勝ったのは早乙女だった。
「うわー、似合ってなぁい。」
「お前が用意しといてなんでいいようだ。まじで。うぅ〜。」
見なくても分かる。
どんだけ酷い格好をしてるかなんて。
「服返せ。」
「やぁだ。」
「は?なんで。」
「だって、このままデートするんだよぉ?」
「は?このまま外出る気じゃないだろうな。嫌だからな。死んでも嫌だからな。」
「えー、そんなぁ。…ひどぉい。ユーキ君。」
同じくふりふり衣装の早乙女の上目遣い。女の子と言われたら信じると思う。そして、女の子に免疫のない俺はそういうのに弱い。が、それとこれとは話が別だ。
「いくらそんな可愛い言い方しても無理なもんは無理。それに周りの人も見てて見苦しいだろ。」
「ちぇ〜。ならぁ、お部屋デートしよ?」
「お部屋デートってなんだ。」
「デートはデート。DVD見たりするだけだよぉ。」
「誰が行くか。展開が分かりきってんだ。」
「…分かったぁ。グスッ。諦め、ひっく、るねぇ。」
「うっ、そんな泣いても…。」
「仕方ないからぁ、この写真を部屋に飾ってぇ、デート気分味わうねぇ。」
写真。
写真。
写真。
なんのって、スマホで撮られた俺の写真。
ふりふりのワンピースを着て怒ってる俺の写真。
「なっ、いつ撮って!」
「えー、いまぁ?」
「いまぁ?じゃない!消せよ、それ!」
「やぁだ。ユーキ君がお部屋デート付き合ってくれるならいいよぉ?」
「分かったから、それ消せ。その代わり何もすんなよ。」
「やったぁ!じゃあ、ユーキ君。僕の部屋にしゅっぱーつ。」
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