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媚薬の酒②
「あっ、かいちょーだ。なんでぇ?」
「僕は皐と飲む約束をしていてね。」
「…珍しい。」
「ふふっ、そうでもないよ。たまに仕事関係のことで話をするんだ。」
「おれ、じゃま?」
「そうは言ってない。今日は結城を交えて話してもいい。」
「ふーん。」
「でも、結城。そろそろこれはやめとこうね。」
俺の目の前にあったグラスを奪われる。既に半分以上は飲んでいるとはいえ、まだあと少し残っている。
「いーやぁ。」
「だめ。」
「むぅ…。財前…。」
「俺は知らね。」
「それより結城、楽しい話をしよう。」
楽しい話?
それなら俺のとっておきの話をしよう。
「えっと、この前授業中にな、数学の先生が教室に入ってきたら、なぜかその場で転けて、頭のカツラが吹っ飛んだんだよ。しかも本人は気づいてないの。そのまま授業始まっちゃって、結局気づいたの授業終わった後。めちゃ面白かったぁ。」
「ああ、山田か。」
「山田…。ああ、あの…。育毛剤でも渡してあげようか。」
「それは逆に鬼畜だぞ。」
「んー?ふふふ。」
なぜか育毛剤の話で盛り上がる2人を横目にテーブルに置いてあったグラスを手に取る。俺は、喉が渇いたのだ。ごきゅごきゅと飲み干した。
「あの会社の息子はあまりいい噂を聞かないからね。」
「株価も低迷しているな。」
「そういえば、あの製薬会社はどうなったの?」
「投資した。」
「へー。結構な博打だったんじゃない?」
「いや、そうでもない。あれは…。ん?おい、結城。俺の飲んだろ。」
難しい話はよく分からないしつまらない。それに頭も働いてない。ポカポカするし、ぽーっとするし、なんか気持ち悪いような気持ちいいような。
「ざいぜんー。ぎゅー。」
隣に座っていた財前に抱きつく。無性に人恋しい。人肌を感じていたい。
「財前ー。」
「おい、結城。どかないと犯すぞ。」
「むふふ。」
「結城、僕には?」
「かいちょー?会長はよしよししてあげる〜。」
「ふふ、結城、それだけ?」
「んー、ちゅう〜。」
きすきすきす。
ほっぺにちゅっ。
「酔ってんのか。」
「酔ってるみたいだね。」
「…。」
「…。」
「仕方ねぇ。俺の部屋でいい。その代わり俺が最初だ。」
「仕方ない…か。」
「かいちょー?ざいぜんー。」
「結城移動すんぞ。」
「きもちいーこと?」
「ああ。そうだ。」
「優しくしてね。ちゅっ。」
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