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愛の証明①
「あれ?副会長は?」
とある日のとある生徒会室。仕事仕事と訪れたそこには副会長以外のメンバーが揃っていた。
「菊臣は部活だよ。」
「部活?そういえば、入ってたな…。柔道部でしたっけ?」
「そう。基本的には生徒会を優先して貰ってるけど、今の時期はそこまで仕事はないからね。そうだ、これ、菊臣に持っていくついでに見学しに行くといい。」
資料を渡され、そのまま生徒会室を出る。本当に今の時期はすることがないらしい。生徒会室に行ってすぐ追い出されるのもなんだかなと思いつつも道場へ向かう。
ドンッ。
畳が叩きつけられる音が響き渡った。柔道場の出入り口からひょっこり覗き込むと、副会長が部員を投げ飛ばした後だった。
「うわー。」
カッコいいにつきる。
そもそも、副会長の顔も身体も理想そのものなのだ。それに加えて、平気で人を投げられる武道の達人。
勇ましい…。
こんな男ばかりの学園じゃなかったら、さぞモテただろう。
「なんだ?チミっこいの。入部希望者か?」
「ちみっ…。でか…。」
副会長に見惚れていると、後ろから声を掛けられた。聞き捨てならない言葉にむっとしながら振り返ると、2mあるんじゃないかと思うくらいの男が。副会長よりデカいな、これ。
「南!!部長、こいつは生徒会の…。」
「ああ、例の…。すまん。すまん。」
駆け寄ってきた副会長にホッとする。
「あっ、副会長。俺、資料。これ。」
カタコトだ。
恥ずかしい。
でも、こんなデカい奴見たことなくて、変に肩に力が入る。
「じゃあ、俺は…。」
「ふん…。南だったか。見学して行けよ。」
「いやいや、仕事があるから。」
「この時期暇なんだろ。さっきも早乙女のとこの坊ちゃんが菓子持って歩いてたぞ。」
いや、確かに暇だけど、早乙女さっきまで生徒会室いたろ。なんで、菓子持って歩いてんだ。
「ほれ、中入れ。それともこんな男臭いとこ入れねーか。」
「いやいや、そんなこと。」
「ならいいだろ。ほれ、そこら辺に座れや。」
なんなんだ…。
小さな溜息をついて、恐る恐るその場に正座する。部員達が俺の方を不思議そうに眺めている。
「おしっ、みんな。あいつは生徒会の南だ。南は菊臣の女だから手出すなよ。」
「はぁ!?」
「今日は見学だから、菊臣1人にカッコつけさせないように、気合入れてけよ〜。」
おいっ!
虚偽情報流すな!!
言葉にする前に口を塞がれた。
解せん。
じろりと睨んだが、全く効果なし。
「じゃっ、続き始めんぞー。」
各自練習に戻りやっと口から手が離れた。
「なんであんな嘘ついたんだ!」
「まぁまぁ、いいじゃねぇか。」
「良いわけないだろ。」
「そうか?でも、菊臣はよく南は、南はって呟いてんぞ。あんなに想われてんのに知らんぷりしてる奴もどうかと思うがな。」
口を閉ざす。
確かに副会長はよく愛していると俺に言う。でも、そんな言葉どう信じればいい。いつなくなるかも分からない愛の言葉なんて…。
「菊臣の想いは嘘でも何でもない。ただあいつは単純なところがあるから、たまに馬鹿なことする時もある。でもよ、そん時は許してやって。」
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