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愛の証明②

会長からの連絡。 『仕事はないから道場にいるなら菊臣と帰って良い』 だそうだ。 徒歩。 副会長が提案した。 俺も買い物がしたかったし、それに頷く。 学校から15分歩いた頃くらいか、副会長は口を開いた。 「南。寄り道しないか?」 「えっ、あっ、はい。」 寄り道なんて、副会長にはあまり想像つかない言葉だ。咄嗟に出たのは肯定の意。副会長はふっと笑い、俺の腕をやさしく掴んだ。 「こっちだ。」 高台へ登る。 こんなところ来たこともなかった。 入り組んだ道を抜けると、正面が開いた。 展望台。 ちょうど夕日が落ち、街を黄金色に染めている。 「うわぁぁ。すごい。」 「ランニングをしているときに見つけた。この光景、南が喜ぶと思って、連れてきてみたかったんだ。」 「副会長…。ありがとう。凄く嬉しい。」 「そうか。…南、さっきの部長の言葉。俺が謝ろう。すまなかった。皆んなには訂正した。だが、部長の言った言葉に間違いはない。俺はお前が好きだ。俺と付き合って欲しいと考えている。」 「え…。」 「分かっている。お前がこの気持ちを信じてくれないことを。 当たり前だ。俺たちはお前を無理矢理犯した。今なおそれは変わらない。だが、俺は後悔していない。後悔できるはずがない。 俺達はお互いに牽制しあっている。それは、お互いに気を抜けないほどの好敵手であると認めているからだ。だから、柊が出した提案に乗るしかなかった。 俺は、お前を誰かに譲るなんてこと出来ないんだ。可能性があるなら、その可能性に賭けたかった。お前をどんな手を使ってでも手に入れたかった。」 そんな話されたって…。 簡単に頷けるはずない。 「俺は、お前が好きだ。だからこの気持ちを信じて貰うために次の試合で優勝する。もし、そこで勝てなければ俺はお前をきっぱり諦める。もし、勝てたら、俺のこの気持ちを信じてくれないか。」 「え…。」 「受け入れてくれなんて言わない。ただ、信じて欲しいんだ。本気でお前を愛していることを。」

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