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愛の証明④
大会当日。
まぁ、晴天だこと。
「応援行かないの?」
「行くよ。行くけど。」
と、そんなやりとりを数分繰り返した。今日は生徒会総出で応援に行くそうだ。
というか、仕事だ。
生徒の部活を見学するという名目の。
部費を払う価値のある活躍をしているかどうかの調査らしい。そして俺は行くのを渋っている。
「何にそんな迷ってんの?」
曽根は心底不思議だというように首を傾げる。恐らく、俺と副会長の賭けは知っているだろう。だから曽根が疑問を抱いているのは俺のこのウジウジした悩みの方だ。
「俺の為に勝つって言うんだぞ!!恥ずかしいだろ…。」
「えー、そんな理由?」
「不純だ。それにあんな賭け…酷いだろ。」
「ああ、結城君は欲張りだもんね。もし負けて菊臣君からの好意が受け取れなくなったら悲しいってわけだ。」
「なっ!ちがっ!」
「違わないよ。君は嫌だ嫌だと言いながらその好意を甘んじて受け入れている。
おかしいよね?
嫌なのに、愛してはほしいんだ。
そして今回の件。
負ける可能性が大いにある中で、焦った。もし、負けたら、愛してくれなくなる。結城君は俺たちに愛なんて返してくれないのに、酷いよね。」
汗が伝う。
そんなことあるわけないのに。
「菊臣君のことを愛しているわけじゃない。もちろん、生徒会の誰かに好意を寄せているわけでもない。
でも、菊臣君は賭けた。
その理由は?それは君に知って欲しいからだよ。この愛は他のどんな奴にも負けない愛だって。この愛は例えどれほどの愛を掻き集めても足りないくらいの重たい愛だってね。
そして、その愛を感受さえしてくれれば、結城君1人なんら問題ないくらい満たしてやれるってね。」
分かってる。
分かってる。
分かってる。
そして、その溢れるほどの愛を俺は拒絶し続けたことも。
「でも、でも、俺は…。」
「ああ、その先は言わなくて良いよ。どうせ、大した話じゃないし。それより、そろそろ行こうか。」
「曽根。曽根!!俺は、貪欲だから、それでも悩み続けるよ。」
「…ふーん。まぁ、好きにするといいよ。どうせ期間は決まってるんだから。」
曽根、お前はクソみたい性格だけど、意外と他の奴のこと大切に思ってるよな。じゃないと、副会長の試合に見に行かせようとしない。クソな性格のくせに。
ああ、もう、本当にこいつらがどうしようもない悪人だったら拒否できるのになぁ…。
なんで、お前らはそんな不器用なんだ。
そして、俺も俺だよ。
馬鹿野郎。
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