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愛の証明⑥

裏口で副会長が出てくるのを待つ。 会長達は車で帰った。 俺は、副会長に話すことがあるからと断った。柔道部員がぞろぞろと現れる。副会長は1番後ろから出てきた。金ピカのメダルを首にかけて。 「南…。部長、俺はここで。」 「おうっ!愛の力に負けた俺はお前に言うことはねー。」 銀色のメダルはしまったのか、その首には掛かっていない。少し、困ったような顔をした副会長は礼を言い、俺の方に振り向いた。 「南、帰るか。」 「はい。」 徒歩。 相変わらずの徒歩だ。 「副会長、俺、行きたいところがあるんですけど。」 「分かった。」 展望台。 もう日は暮れていて、あたりは真っ暗だ。 だけど、ポツポツと見える淡い光はそれでも美しいと思える。 「副会長。俺さ、本当にダメなやつなんだと思う。副会長が負けると思ったらすごく嫌だった。でも、副会長を好きなのか分からない。だから、その…。」 「お前の気持ちは分かった。分かっていてあえて言う。お前はそのままでいい。貪欲なお前を愛している。例えお前が他に好きな人間が出来ても、俺はお前を愛し続ける。南。愛している。」 じんわりと身体に広がる。 ああ、なんだ。 なんだ。 こんなに重たい愛。 信じたくなくても信じるしかないじゃないか。 「副会長、ありがとう。」 「ああ。」

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