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帰省と報告②

満月だ。 ブランコに揺られながら、無になる。 「こんなところにいたんだね。」 月明かりに照らされて現れたのは酒田さんだった。俺は思っていたことを言葉にする。 「早過ぎじゃないですか。」 「そうかな。」 「この前宣戦布告受けたばっかりですけど。」 「宣戦布告した記憶はないけどな…。」 「…宣戦布告ですよ。まぁ、母さんが幸せなら別に俺がとやかく言う必要なんてないんですけど。」 「君が身体を支払っているのに?」 顔を上げる。 知って…。 「洋子さんには言わないよ。でも、そうか。やっぱりそうなんだね。」 「あっ…。」 嵌められた。 「いや、楓ならそうするだろうと想像はしていたさ。あの子は狂気を秘めている。欲しいと思ったら手加減などしないだろう。でもね、結城君。嫌なら助けてあげられる。大方、退学でも迫られたんだろう。私に任せてくれたらそんなことどうとでもなる。君は私の愛する人の息子だ。大切にしたい。」 「お、れは…。」 そうか。 解放されるのか。 元々無理矢理だった。 そこから抜け出せるんだったら、俺は…。 「いや、大丈夫です。」 「それはなんで…?」 「それ…は…。あいつらは確かに俺の尊厳を貶した。酷い目にもあったし、いつかこの地獄から抜け出したいとも思ってる。でも、なんでだろ。俺、知ってんだ。あいつらすげぇ不器用なんだよ。少し前まで愛してるだなんて嘘っぱちだと思ってたけど、覚悟知っちゃったから。俺が逃げるのは違う気がする。」 副会長の本気の告白で気付いてしまった。 気付いてしまったからもう、逃げられない。 「そう…。何かあればいつでも助けるからね。」 「ありがとうございます。母さんをよろしくお願いします。」

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