98 / 136

社交界①

社交界。 それもなんと柊家の御当主様の誕生日会らしい。 いい歳して誕生日会なんてwとか勿論言える筈ないし、なんなら思う事すら罪だ。ガチガチに固まりながら会場についた。母さんは何故か余裕がある。 「母さん、なんでそんな緊張してないの?」 「あら、誕生日会でしょう?」 なんだろう、天然ボケ…?いやいやそんなそんな。そんなわけないよな…。 「結城。」 「あっ、会長。」 スーツ姿の会長。さすが、俺とは違ってスーツ姿がよく似合う。 「結城さんのお母様ですね。初めまして。生徒会長を務めております、柊楓と申します。」 「ご丁寧にありがとうございます。結城の母の南洋子です。いつも結城がお世話になっております。」 「いえ、結城君にはいつも助けられているので。ああ、そうそう。先程、叔父が探しておりましたよ。」 「あら、そうなの。」 「結城君の案内は私が引き受けますので。」 「ありがとう。結城、ご迷惑おかけしないようにね。」 母さんはそれだけ言うと、酒田さんの元へ行ってしまった。 「さすが、結城。とても似合ってるよ。」 「会長に比べたら、俺なんてスーツに着せられてるようなもんだよ。」 「ふふふ。そんなことないけど。あまり緊張しなくて大丈夫だよ。会場に入ろうか。」 ロボットのようにかくりと頷く。 社交界もどきは学校で経験してるんだけど、やっぱり自身より幾分も歳上で、何より身分がここまで違うと恐れ多い。 身分なんて関係ない。 俺は俺だなんてそんなこと言えない。 それ程までに煌びやかで美しい世界だ。 ひたりと冷や汗が流れた。 「結城、大丈夫。君が思うほど彼らは凄くない。醜い感情を持ったただの人間だよ。神でもその使いでもないんだ。」 手を優しく握られ、ホッと息をついた。会長の方を見ると、ふわりと笑っている。その顔を見て、なんだかとても落ち着いた。 「ほら、美味しいものも置いてある。後で一緒に食べようか。」 「うん。」 「まずは挨拶するのがマナーだから。僕の父から挨拶しに行こうか。」 「うん。」

ともだちにシェアしよう!