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社交界②

会長の父に会いに行く。 ふと、会長の父という点に違和感を抱いた。 んんん…。 待て待て、会長の父ということは…、柊グループの社長か。気づいた時には遅かった。 「お父様、お母様。彼が先日話をしていた南結城君です。」 オーラが凄い。どっしりと構えている感じ。そして、会長の父とだけあり、清潔感と美しさを兼ね備えている。その横にふんわりと控えているのは優しそうな顔つきの美人。まるで蝶々かのようなそんな人。 「君が…。」 無言を貫いている。 上から下まで見た後にポツリと言葉を漏らした。 「分からんな。」 「え…。」 「女でもなければ、品の良い男でもない。まるで良さが分からん。楓、私は許さんからな。」 拒絶。 別に許しが欲しかった訳じゃない。そもそも許す許さないなんて俺には関係ないのだから。でも、何もまだ何も知らないのに、拒絶されたことに苛立ちを覚えた。 「お父様、分かっていますよ。でも、あなたも分かっている筈です。もう、彼以外の誰かを受け入れることなど不可能だと言うことを。」 会長に腕を掴まれ、その場を後にする。モヤモヤした気持ち悪い何かが渦巻いている。 「ごめんね。こんなつもりはなかったんだけど。」 「いや、いい。」 「お父様もきっと分かっている筈なんだけどな。」 会長が何かを言っている。 何かを呟いている。 だけど、俺は会長のお父さんが言った言葉が胸に引っかかる。 良さが分からんだと。会ってすぐに俺の良さが伝わるわけないだろう。そうだ。そうなのに。なんで、なんで俺…。言い返さなかった。 「結城。そんな顔しないで?父は婿養子なんだ。だから分かっていないだけなんだ。」 「は?それはどういう…。」 「ううん。それより結城。少しゆっくりしようか。あんな態度を取られたばかりで他の人と交流だなんて疲れるだろう。」 会長はどこからか持ってきたグラスを俺に渡した。ごくりと飲み込む。ほんのりとした甘さが口の中で広がる。 「美味しい…。」 「良かった。少ししてから戻ろう。」 その後、会長の言う通りの順番で挨拶周りを行った。恐らく会長の親族やその関係者なのだろうが、何故かみんな、俺を見ると可哀想な目つきで見てきた。あれは貧乏人を哀れに思ってるとかそんな目ではない。 「結城…?大丈夫?」 「へ?」 「顔が赤いよ。」 確かにポーッとしている。思考が纏まらず、足も覚束ない。 「そっか、もっと強い酒じゃないとダメなのか。」 「何か、言った?」 「いや、何でもないよ。結城、挨拶回りも粗方終わったし、少し休もうか。」 「…わかった。」 緊張で熱でも出たんだろうか。取り敢えず、ゆっくりさせてもらおう。

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