103 / 136
準備とコスプレ①
夏。
夏休み。
というのに、今日も今日とて、生徒会の仕事だ。バイト尽くしだった去年に比べて余裕はまだあるものの、意外と生徒会の仕事も重労働だ。
「あれ…?珍しい組み合わせだな。」
生徒会室に入ると副会長と早乙女の2人がいた。あまり見ない組み合わせに驚く。
「かいちょーと財君は家のお仕事で、柾君は学園祭関連の仕事で外出中〜。」
ああ、だからか。
じゃあ、今日はこの2人と一緒か…。
大丈夫かな?
「それより、今日は会長の叔父さんとお母さんとでご飯だったんでしょ?どうだったぁ?」
「いや、まぁ、普通だな。」
いつも通り、ふわふわしてる母さんとその母さんを愛してます!って感じの酒田さんがいるだけだった。
酒田さんは苗字は違うが、柊家の血筋を継ぐもの。警戒はしたけど、2人は両思いだから取り敢えず今は保留にしておいた。
「かいちょーは着々にユーキ君を囲ってる感じするよねぇ…。どうにかしないと、知らないうちにユーキ君を奪られちゃうなぁ。」
早乙女が目を細め、笑った。
なんだか身の危険を感じて、急いで置いてあった書類に手をつけた。
「南。」
「うわっ!副会長。」
無言だった副会長がいきなり声をかけてきた。あからさまに驚いた俺にすまないと一言。
この人に一途な愛を呟かれた訳だけど、関係性が激変に変わる事はなかった。いつも通りの接し方だ。
「南、来て早々で悪いが会議を行う。」
「会議?3人で?」
「学園祭では生徒会も出し物をしなくてはならない。他3人は適当に決めていいと言っていた。時間もないからすぐに決めたい。」
生徒会の出し物か…。
「演劇とか?」
「素人の演劇を見て誰が楽しむんだ?」
あれ?育ちの違いが今出たぞ。
「菊君、頭硬いよぉ。素人が下手な演技するのを笑うっていう楽しみ方があるでしょ〜?」
なんちゅう考え方してんだよ。ってか、それだと笑われるの俺たちだぞ。
「じゃあ、例えばなんだよ。」
「んー、例えばぁ、ファッションショーとか?僕たち人気だからぁ、需要あるでしょ〜。」
お前らはそりゃ人気だろうが、それ、俺からしたらお前らのファッションショーみてどうなんだってなるぞ。白けるぞ。
「あっ!試しに着てみる?」
「何を?」
「これ!」
早乙女の手には軍服のようなものが握られていた。
ともだちにシェアしよう!