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準備とコスプレ②

「お〜!!」 副会長が身につけているのは軍服。剣を腰に下げ、いかにもな格好だがイケメンだから許される。副会長は恥ずかしそうに帽子を深く被り直した。 「菊ちゃんは背が高いしガタイがいいから入りそうなのそれぐらいだったんだけど、相変わらず似合うねぇ。」 「相変わらずって?」 「これ、去年の生徒会の出し物だったんだよぉ。今菊ちゃんが着てるのは前会計の衣装だったと思う。それで、これが菊ちゃんが去年着てた服。」 浅葱色の羽織。背中には誠と書かれている。新撰組の衣装だ。そして絶対似合うやつだ。 「南は見ていなかったんだな…。」 ゔっ…。 そんな責めるような目で見ないでほしい。 去年は自分のクラスの出し物で忙しかったんだ。いや、正確にはある時間帯にだけ人がいなくなった。 クラスの出し物には1人絶対ついておくのが原則だから、俺がその場にいた。多分その時間帯に生徒会の出し物があったんだろう。 「ほか、他は何があるんだ?」 「んー、これとかいいよねぇ。」 執事の服だ。サイズは俺が着るには少し小さ過ぎるが、早乙女が着るのであれば丁度いい大きさだろう。 「早乙女、着るか?」 「そうだね〜。」 早乙女の女装でない格好はあまり見たことがない。意外と楽しみかも…。 「じゃあ、ユーキ君はこれね。」 綺麗に畳まれていて何のコスプレか分からない。ただ、去年は早乙女もいなかったわけだし、きっと男性ものだろう。 なんだかんだ、コスプレを楽しみたい俺だ。 生徒会の奥にある仮眠室に入る。 さてと、服を広げてみる。 「ん?はぁぁぁあああああ!?おいっ!早乙女!この服なんだ!この服は!!」 メイド服。 膝丈くらいのスカートの裾。 服の中にはニーハイが入ってた。 誰だ、去年早乙女とかいなかったしなんて言ったやつ。まんま女装趣味いるじゃねぇか。 「ユーキ君のえっち。」 ドアを開けた先にいた早乙女。 着替え中だったのか、肩がはみ出ている。 「あっ…ごめん…。」 いけないものを見てしまった気がして、すぐにドアを閉めた。ハーレム系のアニメでよくあるハプニング。主人公の気持ちが少しわかった…。ってそうじゃないだろ!おれ! 「おい、早乙女!これ、どういうことだよ!」 再度ドアを開けたら着替え終わった早乙女の姿が。似合う…。 「どうしましたか?お嬢様❤︎」 なんてははっ、そうだこいつら顔だけは良かったんだ。 って!だからそうじゃないって。 「おいっ、俺のこの服なんなんだ!!」 「いいでしょ〜。僕の服だよ。」 私物か!どうりでおかしいと思った。 「こんなの着ないからな!たくっ。」 「グスッグスッ…。なんでそんなこと言うの…、ユーキ君のばか。」 「うっ…。」 涙をポロポロと溢す。 「ユーキ君も僕の趣味を否定する?」 「い、違う!俺はただ自分が着るのが嫌なだけで。早乙女はいつも似合ってる。別に否定したかったわけじゃな…。」 「じゃあ、着てくれる?」 「それは…ちょっと…。」 「ちょっとじゃないよ。やっぱりユーキ君は…。他のみんなと一緒…。」 「分かった!分かったから着るから!着ればいいんだろ!!」 俺が頷いた瞬間。 早乙女は急にニタ〜と笑った。 そして嵌められたのを知る俺。 「はいはい、早く着てきてねぇ。んふふ。」 仮眠室に追いやられ、ため息をつく。やられた。嵌められた。

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