112 / 136

ホラー映画鑑賞会①

風呂上がりのアイスは最高だ。ただその大事なアイスを買い忘れ、コンビニへと向かった俺は帰り道悪魔に出会ってしまった。 「げっ…。」 「あっ、結城君だ。」 「お前風呂上がりのアイス好きだな。」 柾斗と皐だ。 2人の両手にはレンタルビデオのマークのついた袋が握られていた。 「なんでお前らここにいんだよ。」 「見ての通りビデオ借りにいってたんだ。これ、結構古い映画だから、配信されてなくて。一緒に見る?」 「絶対エロい奴だろ。見ねーよ!」 「エロくないよ。そもそも俺たち2人で見てもなんの得にもならないし。」 それは言えてる。柾斗と皐が一緒にAV見てたら普通に面白い。ただ、そう油断させて実は…なんて展開も死ぬほどしてきた。 「…信じられねーなら、見てみろ。」 じーっと柾斗と皐を見ていたら皐がため息をつき、袋を開け、中身を見せてくれた。 小さな袋には3枚のDVD。 『愛のカタリナ』『輪』『少年兵の幻想』 それぞれのタイトルに違和感はない。 「そもそも、俺達未成年だよ?借りられるはずないじゃん。」 「まぁ、確かに…。疑ってごめん。」 「結城君がどーんな妄想したのか気になるところだけど。」 「うぐっ…。だって、お前らそうやって俺を嵌めようとするだろ。」 「文字通り?ハメようって?」 「寒いわ!」 たく…。 「んで、結城、見んのか?」 DVDか。娯楽に疎い俺はタイトルだけじゃその内容はよくわからない。どうしたものか。 「結城、忘れてねぇか?夏休みの課題。」 「課題?俺、全部終わった…。」 いや、待て待て。一つ残ってた。 「映画見て感想書くやつ!あれか!」 後で見ようと残していたことを忘れていた。複数の映画の中で好きなのを見ろと言われたが、その映画は全て知らない作品。大分マイナーなものばかりだった。自分で探すのも面倒だし、こいつらと一緒に見た方が楽かもしれない。 「なら一緒に見ようかな。あっ、でも変なことすんなよ。」 「えー!」 「えー!じゃない。」 「まぁ、いいや。取り敢えず、お菓子買って帰ろっか。」 シアタールーム。 そういえばそんなところもあったなと思いながら、ゆったり出来るソファに座る。他の連中、主に鈴は誘わなくていいのかと聞いたところ、今日はみんな実家にいるか、別で予定があるらしい。さすがお坊ちゃん、夏休みでも忙しいなと思う。 「そういえば、何見るんだ?」 「ああ、これにしようかなって。」 差し出されたのは『輪』と書かれたビデオ。聞いたこともない作品名だ。どんな作品か分からないのだから、とやかく文句も言えない。大人しく見るしかない。 その時、俺は知らなかった。 この物語が世にも恐ろしい物語とは…。

ともだちにシェアしよう!