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夏合宿①

夏だ、海だ、 「合宿だ〜!」 俺は両手をあげて、広い海に向かって叫んだ。 「ユーキ君、テンションたかぁい。」 鈴のツッコミを無視して俺は海に向かって駆け出す。 「ははっ、結城君は元気だなぁ。まさか海がはじめてなんて…。いや、まさか…。」 柾斗が哀れな目で見ているのも知らずに、俺は画面の中でしか見たことのない海にテンションを上げていた。 「本当に海って青いんだ!キラキラしてるんだ!」 「結城、一度別荘に行こうか。せっかくだから泳ぎたいだろう?水着も用意してる。」 「泳げるのか!」 「もちろん。」 会長…もとい楓さんに促され、泣く泣くその場を離れる。早く海に入りたくて仕方がない。早足で別荘に向かった。 俺たちは生徒会の合宿で無人島に来ていた。合宿と言っても、ただの遊びのようなものらしく、毎年生徒会の交流を兼ねて行われているようだ。 本来なら海外でバカンスだと言うが、金持ちどもと違い俺はパスポートを持っていない。それに驚き、哀れな目で見てきた愚か者どもがいたのは言うまでもない。因みにムカついたので、蹴り飛ばした。 まぁ、それは置いといて、結局楓さんが保有する無人島で合宿することが決まった。もう一度言おう、楓さんが保有する無人島である。 「誕生日に無人島もらうとか金持ちめ。」 「ふふっ、もし運命の相手が海外が苦手だったら困るからね。」 いらん配慮だ。 島には大きな屋敷が立っていた。無人島…、既に有人島であることは置いといて、とにかく一目を気にせず遊べるのは幸せなことだ。案内された部屋で海パンに着替え、さぁ、遊びに行くぞ!と扉を開けた。      「色気がねぇな、結城。」 「んげっ、なんで俺の部屋の前にいるんだよ!」 皐と菊臣先輩が部屋の前には待ち構えていた。2人とも同じように海パンを穿いている。 「結城、これを着ろ。」 上着を受け取る。 チラリと菊臣先輩を見ると目線を逸らされた。 「お前の肌を他人に見せたくない。」 「いや、ここ無人島…。」 「使用人がいるだろう。それに、目のやり場がなく困る。」 菊臣先輩があまりにも切実そうに言うもんだから頷いて上着を羽織る。 「おい、海行くんだろ、さっさと行くぞ。」 皐が急かすように告げた。 「うん…って、そういえば他の3人は?」 「早乙女は少し遅れるらしい。柊と曽根は家の仕事が入った。」 「へー、そうなんだ。」 せっかく海で誰が速く泳げるか大会でもしようと思ってたのに…。仕事なら仕方ないか。 残念に思いながらも、俺ははじめての海に心が弾んでいた。

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