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夏合宿②
砂浜、裸足で歩くと熱い!
あついっ、あついって言いながら、海に足をつけた。今度は冷たっと叫んで笑う。
「おーい!お前らもこいよ!」
手を振るが中々こっちに近寄ってこない。
仕方なくサンダルを履いて戻る。
「何してんの?」
「日焼け止めだよ、あほ。」
「あほって言うな!でも、そっか、日焼け止め塗ってなかった。」
「真っ黒になりたくなかったら、塗っとけ、あほ。」
「ぐぬぬぬ…、分かった。あっ、そうだ、浮き輪忘れてきた。」
せっかく用意してもらった浮き輪を部屋に置きっぱなしにしていたことを思い出す。皐はため息をついて、立ち上がった。
「あれ、どっか行くのか?」
「浮き輪取りいってやる。お前は黙って塗っとけ。」
俺は笑って頷いた。
「ありがとう!」
「ちっ…。」
舌打ちした皐は別荘まで歩いて行った。残された俺は日焼け止めを塗る。
「結城。」
「ん?どうしたんですか?菊臣先輩。」
「そんな塗り方では焼ける。肌の焼けたお前も見たいが、焼けすぎると次の日にヒリヒリしてしまう可能性がある。そうなると、明日は海では遊べない。」
「あっ、じゃあ菊臣先輩が塗ってくれませんか?」
この時、俺ははじめての海に浮かれていた。普段の俺では決してしないお願いを自らしてしまった。しかし、それこそ浮かれすぎてその過ちの発言も理解していなかった。
俺から日焼け止めを受け取った菊臣先輩はごくりと唾を飲み込み、俺の背中に日焼け止めを垂らした。
「ンッ!」
ヒヤッとして、身体が跳ねる。
「結城、塗るぞ。」
「え、あはい。」
背中に菊臣先輩の大きな掌が乗っかる。冷たいと感じた日焼け止めも体温に触れてしまえば、すぐになんともなくなった。ただ、塗り広げられるのに少し擽ったい。
「結城、背中は塗り終えた。良ければ俺の背中も塗ってくれないだろうか。」
擽ったさと共に少しだけ、ほんの少しだけ感じていたら、菊臣先輩が声をかけてきた。恥ずかしくなった俺は無言で頷いた。
「えっと、じゃあ、背中垂らしますね。」
大きな背中だ。
俺はその背中に日焼け止めを垂らし、菊臣先輩がしてくれたように手で塗り広げた。背中なのにしっかり筋肉が乗っている。さすがとしか言いようがない。
そしてこの腕。上腕二頭筋の太さ惚れ惚れするな。俺は筋肉つきにくい体質だからなぁ…。羨ましい。ほら、大胸筋も太くて、硬い。太ってるとかじゃなく、筋肉質の胸。憧れだよな。
「…結城。」
「はい?」
「すまないが、触るのは控えてくれないか?」
「わわっ!すみません!」
いつのまにか背中から胸へと手が伸びていた。これじゃ俺が変態みたいだ。
「あれ、菊臣先輩?どうしたんですか?」
ジッとその場に座る菊臣先輩。いつもは背筋をピンと伸ばしているのに、猫背のまま俺に背を向ける。気になって、正面に行き、漸く俺は理解した。
「えと、あの…すみません…。」
膨れ上がったそこを見て目を逸らす。
あれ、俺のせいだよな。
あぁ、俺のアホ。
何やってんだよ。ほんと…。
少なくとも告白してきた相手にベタベタと。でも、はじめて見た時から菊臣先輩の出来上がった体が気になってたし。海でテンション上がってて…。
「…ふぅ、あの、菊臣先輩…。」
「ゆ、ゆうきっ…。なにをっ…。」
俺は菊臣先輩の海パンに触れた。意を決して告げる。
「あの…、俺、のせいだから、それ責任もつよ。」
「結城、いや、お前に触れられると我慢できない。はじめての海なんだろう。お前の楽しみを奪うのは…。」
「い、いいよ。その代わり激しくはしないでほしい…。」
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