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夏合宿④
「おい、てめぇら何してやがる。」
皐が青筋を立てて近寄って来る。右手にはしっかりと浮き輪が抱えられている。あまりにもミスマッチすぎて笑いそうになる。だが、笑ったら最後どうなるか分からない。なので、視線を逸らし誤魔化した。
「えと、ええと、ごめん…。」
「おい、結城。おめぇ、本当に淫乱になりやがって。」
「財前、あまり結城を攻めるな。」
「あ゛?どうせ、結城があんたを誘うようなことしたんだろうが。」
「誘惑に耐えられなかったのは俺だ。全面的に俺が悪い。」
「チッ…、おい結城!俺を顎で使っておいてお前は楽しくヤッてたんだ。後で覚えてやがれ!」
「別に顎で使っては…、いや何でもない。」
頭を横に振ってため息をつく。
そういや、浮き輪を持ってくるだけでなんでこんな時間かかってんだ。
「おらっ、後ろ見ろ。」
皐が指を刺したのは使用人だ。そして使用人はサメ型の浮き輪を持っていた。
「うわぁ!サメだ!サメだ!」
俺は使用人から浮き輪を受け取り、抱きつく。俺よりデカいけど、軽い!悠々と持てるそれを抱えて走った。海に乗せて飛び乗る。
「おーい!見ろよ、浮かんだ!」
皐に手を振って叫ぶ。波で浮き輪が揺れる。初めての体験に俺は心躍らせた。
皐と菊臣は大はしゃぎの結城を見つめた。
「あいつ、タフすぎんだろ。」
先程まで菊臣とヤッてたくせにもう復活している。いや、何人で犯そうとする皐たちにとっては悪いことではない。
「…財前、すまなかった。」
皐はチラリと菊臣を見た。皐はふんっと鼻を鳴らす。皐は割と早いうちに戻ってきていた。
しかし、既に菊臣と結城は楽しく2人でセックスしていた。本来なら割り込んでもいいところだった。だが、皐は敢えて見なかったふりをした。
それは海が初めてだと言う結城のため。
2人で攻め立てたらあんなにもはしゃげなかっただろう。それは皐とて望んではいない結果だ。あくまで結城のための行動だった。
「おーい!2人ともこっちこいよ!」
サメの浮き輪に喜ぶ結城を見て、間違った判断ではなかったと皐は思った。
“本当に仕方のないやつ”
結城の叫び声に2人は一歩踏み出した。
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