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9・愛してくれよレディ・バード-2

 幸せなのはいいのだけれど、こんなにだらしのないだらだらどろどろの年末年始なんて、いいのだろうか。なんて怠惰。貴重な連休だと言うのにもう半分以上過ぎてしまった。 「あーあ、年末にやりたかったこと、何もできてないよ」 「なんかやることあったのか?」  コートを脱ぎ脱ぎ紅蓮が目を丸める。 「大掃除とか」 「いつもしてくれてるじゃないか」 「お前もするんだよ」 「まあ、そうだよなあ」  俺は冬弥とヤりたいこといっぱいできて満足だけどなあ、とへにゃりと笑われると、怠惰も許してしまうばかりか、下っ腹をきゅんとさせてる自分が情けない。  そろそろガキ使が始まっている。新年くらいはきれいな寝具で迎えたいので、流れ出た涙や涎や体液で結局汚してしまったシーツを取り替える。洗濯機に放り込んで、エビ天チンしようか? とソワソワしている紅蓮をまだ早いよとたしなめて、新しいシーツを敷いたとき。ふと、何かが光って見えた。ベッドマットレスと頭側の壁の隙間。なんだろう、ひょいと覗き込んで。 「――あっ」  思わず声をあげた。 「んーどうしたー?」  おとなしく年越しそばを冷蔵庫に直していた紅蓮が声をかけてくる。なんでもない、と慌てて返しつつ、手のひらに握りこんで隠したものを、開いて、そっと確認した。  金色の、ぴかぴかのテントウムシ。  なんだよ。ずっとここにいたのか。寝るときずっと、僕らのそばにいてくれたのか。どうしようか迷ったが、手早く首に回してつけて、トレーナーの内側に隠した。いつバレるだろう。次のセックスのときかな。だとしたら今晩中かもしれない。きっと驚くだろう。 「あっそうだ、年末ジャンボの確認をしよう。すっかり忘れとった」  紅蓮が楽しげに居間に戻ってきて、財布からくじを取り出した。購入したのは十枚だけだ。番号をざっと確認してから、スマホを手に取る。 「年末だから、今日発表なんだろ?」 「知らないよ買ったことないし」 「俺もはじめてだ」  でも冬弥がいるときに買ったからきっと一等だぞ、とおどけている。んなことあるか。それでもなんとなく、なんとなく気になって、一緒にスマホを覗き込んだ。  グーグル検索の結果を開く。派手な演出とともに当選番号が飛び出してくるのかと思いきや、意外とシンプルな見た目のサイトが現れた。――宝くじなんて、くだらない。金の無駄だ。当たるわけがない。でも、こいつだし、もしかしたら。  僕の胸の真ん中にとまっているテントウムシを、服の上から握りこむ。  年末ジャンボ宝くじ。文字の上に紅蓮の指が乗り、すい、と画面上方向にスワイプして、当選番号があらわれる。  二人、同時に、声をあげた。 「――あっ!」

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