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「快適」

 なんか体がおかしくて、先に寝たのに、  結局、めちゃくちゃに抱かれたあの日。  オレは、啓介に、しばらく、したくないと、頼んだ。  受け入れて、くれて。  で。  土日。結局啓介のマンションで過ごしたけど。  何もされなかった。  おやすみのキスを、された。だけ。  月曜の朝に、啓介がオレのマンションに送ってくれて、授業の用意をしてから、学校までバイクで一緒に来た。  2日間、すごく、心穏やかで。  乱される事も、警戒してドキドキする必要もなくて。  一緒に買い物に行ったり、借りてきた映画を見たり、一緒にゲームしたり。友達だった頃と、何も変わらず過ごした。  啓介は、何もしないどころじゃなくて、 そういう類のあやしい事も一切何も言わないので、からかわれる事すら、無い。  とんでもない事を言われて、赤くなったり、うろたえる事も、ない。  なんか、すごい、良い感じで、2日間を過ごした。  夜も、普通に早く寝れるし。  ――――……同じベッドでは寝たけど、抱き締めてるとマズイからと言って、啓介は背を向けてた。  あれ。怒ってる?  と、そこではさすがにドキ、として、啓介の背中を見てたら。  何か感じ取ったらしい啓介は振り返って、ふ、と笑った。 「怒ってるとかやないよ。 手出さないんなら、抱き締めたりしない方が楽なだけやから、気にせんでええよ」  そんな風に言って、啓介は、オレの頭をぐりぐりと撫でて、おやすみと、頬にキスされて。それで安心して、眠ったんだけど。  という事で。  結果。  今日、3日目にして、めちゃくちゃ、快適。  ただ、それの関係がないだけで、啓介と楽しいことは共有して、楽しく話して笑って。友達に戻ったみたいで。土日、超楽しかった。  もっと早く頼んでみればよかった!なんて、思ったりしている。 「何か、雅己ご機嫌じゃねえ?」 「え?そう?」 「オレもそう思った」  月曜昼頃、周りの友達たちにそう突っ込まれた。  そうかな。  そんな分かるかな?  ……そんな分かる位浮かれてるのは、なんか啓介に悪い?かなと思って。  ちょっと、引き締めようと思ってしまったけれど。  ……でもやっぱり、快適。  午後の授業を聞きながら、ぼー、と考える。  ……啓介とするのって、頭、おかしくなるくらい、気持ちいいけど。  それが、嬉しいかって言われると……。  ……オレは、結構苦手……というか。恥ずかしすぎて、死にそうっていうか。……見られるのもやだし。訳が分からなくなるのもやだし。  オレ、男、なのに、  なんか女の子みたいにひたすら可愛がられて、抱かれて、意味が分からなくされて。気を失うみたいに寝てる間に、体拭かれたりして、抱き締められて寝てて、起きたら、大丈夫かって、心配されたりして。  ……男なのに、オレ、こんなんで、いいのかって。  悩むというか、ちょっと嫌、って気持ちが、ずーっとあるっていうか。  啓介の事は、好きだし。  ――――……オレを抱いてる啓介は、カッコイイと思うし。  ……嫌いではないんだけど……。  オレ自身の事が、納得いかない。  隣に居る啓介を、ちら、と見る。  ノートを取ってたのだけれど、顔を上げるとオレの視線に気付いて、ん?と見返してくる。  なんでもない、と首を振って。  自分もノートに文字を並べてく。  ……頭には全然入ってこないけど。  今日最後の授業が終わって、啓介が隣で立ち上がる。 「雅己、今日どないする?」 「え?」 「うち、来る? 自分ち帰る?」 「――――……んー……」  いつもだと、来いと言われるのだけど。  今日は、聞かれた。  ……うーん。  どうしようかな。聞かれると、困るな。 「雅己、啓介、飯食いに行かねえ?」  ふと、隣に居た友達たちに誘われて。   「いーよ、行こ」  と答えた。すると、当然啓介も来るかと思ったのに。 「オレ今日はやめとくわ」 「えーなんでだよ、一緒に行こうぜ」  周りが皆言うけれど、啓介は笑顔で、やりたい事があるからとやんわり断っている。  教室を出て歩き始めて、啓介と並んだ時。 「ほんとに行かねえの?」  そう聞いたら。 「今日バイクで来たやろ。バイクもって移動とかもめんどいし。今日はやめとくわ」 「……そっか」 「楽しんできな」 「……うん」  頷いて、何となく啓介を見上げると、啓介は、ふ、と笑った。 「オレこっちやから。またなー」  校舎を出ると、啓介はすぐに駐輪場の方へ消えていった。  皆と一緒に、啓介に別れを告げた。  いつもなら一緒に来るとこだけど……と、少し引っかかるけど。  ……まあバイクの事も分からなくはないし。  ……たまには啓介居ないとこ行くのもいいよな。  と思って、皆と、歩き出した。

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