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「寝起きドッキリ?」

 夕飯を食べて、帰ってきた。  自分のマンションに。  ――――……啓介は、夕飯に何を食べたのかなあ。  なんて思ったりして。  それくらい、なんか最近はずっといつも啓介と一緒に居たなぁと思い知る。  ……シャワー浴びて、寝ちまおうかな。  まだ21時過ぎた所なのだけど、そんな風に思った自分。  風呂から出ると、啓介からのメッセージが届いてた。 「もう家ついた?」と。 「ついた。シャワー浴びてた」  そう返したら、すぐに着信音。 「……もしもし?」 『あぁ、雅己? おかえり』 「……うん」 『楽しかった?どこ行ってたん?』 「駅前のお好み焼き食べてきた。楽しかったよ」 『そっか。良かったな』  ふ、と笑う気配。 「……啓介は? 何食べた?」 『弁当屋寄って買うてきた』 「そうなんだ。 ――――……お前も来れば良かったのに」 『――――……』 「……ん?」 『そんな一緒に居てほしいん?』  くす、と笑う啓介。 「別に……んな事言ってねーけど……」 『……そやないなら、たまにはええやん。別でも』 「――――……」  ……まあ……別でも……全然いいんだけどさ。  飯くらい、一緒じゃなくても、全然問題ないんだけど……。 『……また明日ガッコでな?』 「あ、うん。 おやすみ」  なんかかかってきた割に、物凄くあっさりと切られそうになった電話に、咄嗟に明るく、おやすみと伝えた。  電話を切って、髪をドライヤーで乾かす。  いつもだと啓介にされる。  久しぶりに自分でドライヤーするなーなんて思いながら、乾かし終えて、歯を磨いた。  水を飲んで。ふー、と息をつく。  ……なんかする事がない。  せっかく1人なんだから、ゆっくりテレビ見たり、本を読んだり。何をしたって自由だと思うのだけれど。  ベッドの上に転がって、暗い部屋で、目をつむった。  なんか。  呆気ないな。  ――――……あんなに、日々、どうやって啓介から逃げようか、考えてたのに。ちょっとお願いしてみたら、簡単に、良いよって言ってくれた。  もう今日で、3日目。    このままだときっと、明日もこのまま、だろうなと思う。  快適だから、いいんだけど。  うん。 ◇ ◇ ◇ ◇  翌日。  昨日早寝だったからか、ものすごい早く起きた。  なんと、5時起き。  んー……。  もう1度寝ようかと思って15分ほどゴロゴロしていたけれど、全然眠れそうにない。もうすっきりしてる。 「なんか飲も……」  お湯を沸かして、ココアを入れた。 「うま……」  ふうふう冷ましながら、飲んでると。  ふ、とある事を思いついた。  顔を洗って、服を着替える。  学校の用意をして、少し冷めたココアを一気飲みして。カップを洗った。  まだ、5時半すぎたとこ。  よし。  鞄を持って、家を出た。途中のコンビニに寄って、2人分の朝ごはんを買った。あまりこの道は歩かない。いつもこの道を行き来するの、啓介のバイクで、が多いから。なんだか早朝だし、新鮮な気持ちで、うきうき歩く。  あー……――――……チェーン、かかってたら、忍び込めないけど……  まあそん時は、起こすしかないか。うん。  啓介の部屋の前について、カギを開けて、そーっと開くと。  チェーンはかかってなかった。  そーと開けて、鍵をかけて。そーとそーと家に入って、リビングに行き、買ってきたものを置く。鞄も置いて、手も洗って。  6時。――――……今日1限からだから……。  少し早いけど、もう起こしてもいいかなあ。    寝起きドッキリでもしてる気分。悪戯してるみたいで、ワクワクしながら。そーーーっと、啓介の寝室に近付く。 「――――……」  かちゃ、と最小限の音で、ドアを開けて。  そーーーーとそーーーと、啓介に近付いた。  啓介は、ドアの方とは逆の方を見て、寝ていた。  枕元に、スマホと本と電気のリモコン。  ――――……本、読みながら、昨日は寝たのかな。  オレと居ると、あんまり読まないから、たまにはいいんだろうな。  なんとなく、啓介の寝顔が見たかったのに、完全に向こう向いてて、見えないし。  どうしようかな。起こしていいかな。  まだ早いかな。    しばらくその場で立ち尽くして、悩む。

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