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「ドキドキ?」

 起こそうか迷っていたその時。  寝ていると思ってた啓介が、クッと笑い出した。 「あー……あかん。我慢できんし」  むく、と起き上がった啓介が、おかしそうに笑いながら、オレを見上げてくる。 「え。起きてたの?」 「玄関の鍵あいた音で起きた。普通に鍵2つ開けとるし、ビニールがさがさ置いてる音するし、泥棒とかやなくて雅己やろなーと思たから、寝たふりしとったんやけど……」 「……っ」  ものすごくそーっと歩いてたのが、恥ずかしくなる。  くそ。そうだ、こいつ、オレが少し動いただけで起きる奴だった……。 「――――……朝から何しとんの? お前」  くす、と笑って。  優しく、目を細めてくる。 「……なにしてるって――――……昨日超早くねたら、5時に起きちゃってさ。朝ごはん、買ってきたぞ?」 「――――……は。そんな事で、わざわざ来たん?」  啓介は、呆れたみたいに笑う。 「うん。なんか、暇でさ」 「――――……朝から暇て……」  啓介は、くす、と笑った。 「……今何時や?」 「6時くらい」 「ふーん…… 雅己、ちょお来て」 「ん?」  啓介の近くに近付くと。  グイ、と手首を引かれて、啓介の下に組み敷かれてしまった。 「え」  そのまま、むぎゅ、と抱き締められる。 「――――……はよ、雅己」  なんか。  久しぶりに抱き締められて。  なんか。少し。ドキドキするような。 「……うん。おはよ……って。 なんで勃って……っ」  啓介が薄い生地のズボン履いてるから、すごい分かるし。 「あー。生理現象? ……それか、お前が居るからか分からんけど」 「……っ」 「――――……ほっといて。 収まるから」  とか言ってるけど、上に押し乗られてると、脚に……。 「……っ……当てんなよっ」  言うと、啓介は、少し笑って「はいはい」と言いながら、ぱ、とオレを抱き締めていた手を離した。 「……準備してくるわ」 「……うん。――――……パン、皿に出したりしとく」 「ん。 コーンスープ入れといて?」 「分かった」  啓介はそのまま部屋を出てった。   オレは、といえば。  ベッドの上に1人残され、しばし、ぼーーとしてしまう。  ――――……啓介に押し乗られた瞬間。  一瞬。  このまま、キスされるかと、思った。  あんな、あっさり、離れられるとか……。  ――――……まあ、いい、けど……。  少し腑に落ちないものを感じながらも、でもこれ、オレが望んだんだし、だからまあいっか……と思いながら、ベットから立ち上がった。    キッチンで朝ごはんの用意をし始める。  パンを焼いたり、お湯を沸かしたりしてる間に、啓介が着替えて戻ってきた。

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