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「3日目」

「おーきに、雅己」  啓介の髪は濡れてた。 「あれ? シャワー浴びてきたの?」 「ん」 「? 昨日浴びてないの?」 「いんや、浴びたけど……。なんや、おさまらんから、流してきた」 「おさまらんて??」 「――――……ヌいただけ」  ぽふ、と頭を叩かれ。苦笑いでズバリ言われて、マジマジ啓介を見つめてしまう。  朝から何言ってるんだ……。 「……気にせんでえーよ。 パン運んでええ?」 「……うん」  啓介が近くまできて、パンのお皿を持って、テーブルに運んでいく。  オレは、湧いたお湯を、コーンスープの粉末に流し入れる。 「エエ匂い……」  啓介が、コーンスープの匂いにふ、と、笑って近寄ってきた。  スープ用のスプーンを出して、混ぜてくれる。  一緒に全部運んで、食べ始める。 「何でわざわざ来たん? 家でゆっくりしとけばえーのに」 「……何でて…… 思いついたから。……寝起きどっきりみたいな?」  最後はとってつけたみたいな理由だったのに、啓介はそこに面白そうにのっかってきた。 「どっきりしようと思うてたん? ……もう少し寝た振りしとったらよかったけど……せやけどなあ…… めっちゃ静かに動いてるっぽい雅己を想像したら、笑うの我慢できひんかったからな……」 「っもーいいよ。お前、なんでそんな眠り浅いんだよ。もっとちゃんと寝ろよな……」 「寝とるんやけど…… 繊細なんやない? オレ」 「繊細とはかけ離れたとこに居るくせいに……」 「なんやめっちゃ失礼やで」  クスクス笑う啓介。  そう。寝起きドッキリも、確かにちょっとワクワクはしていたけど。  ……なんか、なんとなく、啓介と少し離れてるような気がして。  まあちょっと顔見がてら、一緒にご飯食べに来ただけ。  ……なんだけど。まあ、それは言わねえけど。  食事を終えてから、一緒に片付けた。  歯磨きをしに洗面台に行くと、ちょうど啓介がドライヤーのコンセントをさした所で。 「……ドライヤーしてやろっか?」 「ん?」 「やってやろうか?」 「――――…… ええん?」  くす、と笑った啓介に、ドライヤーを渡される。 「……立ってたら届かねーから、ソファに行って」 「ん」  啓介から渡されたドライヤーのコンセントを抜いて、啓介の後をついて歩く。ソファの横のコンセントに挿して、スイッチを入れて、啓介の髪に温風を当てる。  髪を触りながら、乾かしていく。  だんだんフワフワしてくる髪の毛。  なんかそういえばいつも啓介がオレに掛けてくれて。オレ、やったことなかったような……。なんでだっけ……。  ……あ、そっか。啓介が先にシャワー浴びて、ドライヤーも終えてて、オレが後からって事が多いのと…… 稀に一緒にシャワー浴びた時は、オレもう色んな事されすぎてて、大体疲れ果ててるからだ。啓介のドライヤーしてやる余裕なんて、ないんだ。  ――――……別にオレのせいじゃないな。……うん。  1人でそんな事を考えながら、啓介の髪を撫でながら、乾かす。  ――――……お願い、してから、3日目。  やっぱり、訳が分からない位の感覚に襲われないのは、すごい楽。  絶対、楽。  ……楽、なんだけど。  なんか――――………なんか、いまいち良く分からない気持ちが、むずむずしてる。  なんか、啓介が、遠い。気がする。 よく分かんないけど。 「……気持ちええ」 「え?」   「お前がふわふわ触っとるの、心地ええなーと思うて」  少し振り返って、クスクス笑いながら、見つめられる。 「……うん」  優しい啓介の笑顔に、つられて、微笑む。  ――――……なんか……。  こういう時の啓介は……すげー優しくて穏やかで、好きかも。  友達だった時って、そういえば、ずっとこんなんだった。  いっつも優しくて。 いっつも、そばに居てくれて。  なんか、もうずーっと一緒にいる気がしてるんだけど。  オレ達って。まだ、3年位しか、居ないのか。  ……結構短いな。

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