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「キス」
「ん、終わり」
「――――……おーきに」
乾かし終わると、くる、と振り返った啓介に、じ、と見つめられる。
「雅己にドライヤーされんの、初めてやない?」
「……うん、まあ」
「人にやってもらうん、気持ちえーな。またやって?」
「うん。……いーよ」
嬉しそうに言う啓介に、自然と笑って答えると、ふ、と笑う啓介。
「――――……」
啓介と真正面に立ったらそっと、頬に触れられて。
急にすごく近くなった顔に、どき、として、ただ見上げると。
啓介は、また笑んだ。
「……学校いこか」
くしゃくしゃ、と頭を撫でられて。
啓介が、オレの横を通り過ぎた。
――――……。
何だか、固まってしまう。
またキスされるのかと、思ったんだけど……。
しないで、離れて行った。
「……」
なんだろう、このよく分からない気持ちは。
首を傾げながら、ドライヤーのコードをまとめて、片付けた。
なんか。
啓介とこうなる前に戻ったみたいなやりとりを楽しくて楽だって思ったり。
――――……そのくせ、離れたら気になって。あんな朝早く、自分からここに来てるし。
近づくと、キスされるのかって――――……。
身構えてるというよりは、少し、待ってるような、自分の気持ち。
――――……オレって。
一体、啓介とどうなりたいんだろう。
もとに戻れるなら戻りたいのか。
戻らずに、もう、このまま、進んでいきたいのか。
多分、オレは、考えないといけないんだ。きっと。
そのまま歯を磨いて。
磨き終えて、タオルで口を拭いてると、啓介が洗面所を覗いた。
「もう出れるか?」
「うん。出れる」
すぐ居なくなった啓介。
洗面所の電気を消して、玄関に向かうと。もう準備完了の啓介が先に靴を履いた。
「いこ、雅己」
「うん」
オレも靴を履いて、立ち上がって――――…… 瞬間。
むぎゅ、と抱き締められた。
「――――……朝から来てくれてありがとなぁ、雅己」
「――――……う、ん」
少しの間、抱き締められたまま、頭を撫でられてて。
それから、そっと、離された。
「いこーや」
ん、と頷いて。
鞄を持って、啓介の後について部屋を出る。
「――――……」
鍵を閉めているその姿を振り返りながら。
――――……結局。
キス、しないんだな。
……オレ、キスしても良いって、言ったよな??
キス位したいって言ったの、啓介じゃん。
……舌入れないならいいって言った、よな、オレ。
……舌入れないキスなら、あんまりしたくないって事なのかなあ……?
……って別に。
キスしたいって。思ってる訳じゃ、ないけど。
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