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「モテる」
……また、話しかけられてる。
いつも気にならない、オレと居ない時の啓介。
なんか1回気にしたら、ちょっと気になるようになった。
広い教室。
後ろの方に仲の良い奴らと陣取って座っていたら、後から入ってきた啓介が女子に捕まってる。
まあよくある光景だけど。
今日は朝から、すごくよく見る。ような、気がする。
「――――……なーなー」
「んー?」
「どした?」
「……何で啓介ってモテんの?」
オレの視線の先を辿って、周りの皆が、女子に囲まれてる啓介を見つける。
「あー……」
「ほんとだな。今日もモテてる」
「はは。 嫉妬? 雅己」
不意に飛んできたその言葉に。
「は? なんでオレが」
自分でもやけにムキになったなと思った瞬間。
「えーだって、啓介モテていいなって思ってるんじゃねえの?」
「――――……あぁ……」
あ。そういう意味か。
啓介がモテていいなー、オレもモテたいなー。と、そっちか。
て、当たり前か普通は、そっちの意味だ。
今咄嗟に思ったのは。
――――……啓介がモテすぎて女子に嫉妬してるって、言われたのかと……。
……考え方、啓介の彼女か。オレ。
急に恥ずかしくなって、カッと熱くなる。
瞬間、皆が、ちょっとびっくりした顔。
「……何で赤くなってんの?」
「雅己もモテたいって思うのって、恥ずかしいの?」
まわりが やいのやいの、からかい始めるけれど、全然的を得てない。
そんな意味で恥ずかしいんじゃない。
……っ……自分が完全に、啓介の彼女みたいな立場で嫉妬してると、突っ込まれたのかと思って。 むきになって否定したっていうのが、恥ずかしい訳で……。
ていうか、そっちしか、思いつかないって、オレ――――……。
「つーか、雅己だってモテてるよね?」
そんな台詞に首を傾げる。
「……は? オレ、そんなモテたこと、ないけど」
「ん?」
「え?」
何を言ってるんだろうと、首を傾げると。
友達らも、首を傾げる。
「オレ、お前のこと好きな子知ってるけど」
「オレも」
そんな事を言われても、ますます首を傾げるばかり。
「……オレ、自慢じゃないけど、あんま告られた事もないし……」
「あんまって事は何回かはあるんだろ?」
「……あるけど…… 大抵知らない子だから付き合わないし」
「可愛い子も居たろ?」
「居たけど…… でも、知らなかったし」
言うと、ぷ、と周りが笑う。
「お前って、そういう奴なんだなー」
「知らなくたって、可愛い子なら付き合う奴のが多いよなあ?」
「雅己、かーわいーな?」
クスクス笑われ、頭、撫でられる。
「つか、撫でんな、バカ」
「はいはい、そういうツンツンしてるとこが、可愛いって女子も居るからなあ」
「……言われた事ないんだけど」
さっきから、話がかみ合わない。
しつこくよしよしと、撫でられて、あやされてるみたいで、ムカつくし。
「つかさ、啓介がモテる理由なんて、分かるじゃん」
急にオレの質問に答えてくる。
「……分かるって。例えば、なに?」
「ルックス。背ぇたかいし」
「なんか目立つし」
「優しいって女子の中では評判だし」
「言ってるとむかついてくるけど。まあ、モテるだろ」
くっ……。
なんか男子達まで、モテる理由を認めてる。
なんだかなあ。
かなり悔しい。
面白くなくて、机に頬杖をついていると。
「ていうかさ。 雅己もさ、もっと合コンとか参加すれば?」
「ん?」
「あんま参加しないじゃんお前」
「んー……なんか、苦手なんだよなー……」
少し考えて、そう言ったら、また皆が、マジマジとオレを見た。
「は?何で?」
「何が?」
「苦手て、女子としゃべんのが?」
……合コンが苦手って言った位で、そんな怪訝そうな顔されなくても、いいと思うのだけど……。
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