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「心臓が」

   何で合コンが苦手かと聞かれて。少し考える。 「んー……まあ行った事もあるし、興味もあるけどさー。なんか、そのために来ました、みたいなのが…… 自然に知り合って、好きになる方がいいかなって」  そう言った瞬間。  ぷ、とそれぞれに笑われる。 「……はいはい」 「ほんと、可愛いなあ、雅己」 「なんか貴重だな、お前」  クスクス笑われ。 「……何なんだよっ!」 「んーじゃあさ、お前の事好きな子、教えてあげようか?」 「あ、オレも教えてやるけど?」 「少し話しかけてみるとか、してみたら? お前が気が合うって思えば、そしたら、わりとすぐうまくいくかもよ」 「――――……んー……」  んーーーーー。。  うーーーーーーんんん。  ……なんか、こうやって言われると思うのは。  別にオレ今、女子にモテたいとか。  ……誰か女子と仲良くなりたいとか…… あんま、思ってない気がする。  大学に入った頃は、色んな子と話したし、仲良くなったし、きっとその内、その中の誰かともっと仲良くなって、付き合うのかなー、そしたら、初彼女だなー……なんて、思ってたのに。  ……まあ、たぶん、きっとこれは、間違いなく。  ――――……啓介のせいだ。 「啓介が何でモテんのかとかってさ。 お前が彼女欲しいって事だろ?」 「モテたいって事だよな?」  いや、だから、そこがそもそも、スタートが違ってて。  なんで啓介は、あんなにモテるのかなーて、だた客観的な意見を聞きたかっただけで……。 「つか、お前がちゃんと周り見れば、雅己のこと好きな奴にも気づくって」 「気づかないなら、教えてやるし」  うう。もう、なんか、意味が分かんなくなってくる。 「……何の話や?」  いつの間にか女子達と離れて、啓介が近くに来ていて。  机の端に座ってたオレの横に立っていた。  うわ、なんか、やなタイミング。  どっから聞いてた……?  真横の啓介をなんとなく、見上げられない。 「雅己がモテたそうだから、その話してたとこ」 「啓介だって、知ってるよな、雅己の事、好きな女子」 「――――……まあ、知っとるけど」  ちら、と啓介に視線を流されてる気配。  うぅ。なんか見られてる……。  ちがうっつーの!!  そんな話、してたんじゃないっていうか、いや、こいつらは、してたけど、  オレは違う話をしようとしてたっつーか。  めちゃくちゃ否定したいけど、できない。  だって。今皆が聞いてる前で、オレがこの話で、啓介に言い訳するのって、絶対おかしい。 「まあ……モテるけどなあ、雅己」  そんな風な啓介の言葉が聞こえて。  ちら、と啓介を見上げると。別に啓介、普通の顔してる。  何だか、ずき、と胸が痛い。  ――――……平気な顔、無理にさせてるのかな、オレ。  それとも――――…… 気にならない、のかな。  なんか、考えたどっちでも……胸が、痛い。  思わず唇を噛んで、啓介から顔を逸らした。 「――――……雅己?」  手が伸びてきて、頬をつままれる。 「っ」  まさか皆の前でそんな顔の上げさせられ方すると思わなくて、呆然。 「何、雅己、つままれてんの?」  周りは、ぷ、と笑う位で、全然普通の反応。  あ、皆、その程度の反応なんだ。とそっちには安心したけれど。 「――――……??」  何これ?  啓介がまっすぐ見つめてきてて。戸惑ってると。 「……こんなん、気にせんで平気やで」  くす、と笑って、頬から手を離すと、ぽん、と頭を叩いた。 「――――……っ」  なんか、たぶん、今の会話と、それを聞かれてオレが気にしてる事と。  そこらへん全部ひっくるめてそう言ったんだろうと、すぐ分かった。  ふ、と優しく笑まれると。  どき、と心臓が弾んだ。    そのまま、どくどく心臓が音を立ててる。  オレの隣はもう埋まってたから、啓介は少し離れたとこに座った。  授業が始まっても、弾んだ胸はなんだか少し、うるさいまま。  ――――……くそ。なんだ、これ。

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