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「何か、嫌」

 他の友達が行ってしまって、微妙な雰囲気でオレ達が見つめあっていたそこに、さっきの教室で啓介を囲んでた女子達が現れた。 「あれ、2人でどうしたの?」  そう言いながら、啓介を見上げる。  たぶん、今啓介に話しかけた子は、啓介の事が好きなんだと思う。  よく話しかけてくるし。  啓介をすっごくまっすぐ、見つめるし。距離、近いし。 「今からご飯食べにいくんだけど、一緒にいかない?」  ……今話しかけた子も、好意があるんじゃないかな。  ――――……なんか。前にもこんな風に誘われたな……。  あん時もだったけど、今日も、少し、嫌……だけど。  なんで、嫌なんだろう。 「雅己くんは? 予定ある?」  また別の子が、オレに話しかけてきて、その隣の子も、一緒に行こうと言ってくる。そういやこの子達、最初の頃はわりとよく、ご飯食べに行ったりしてたような……。 「――――……」  あの頃は、普通に女の子達と、楽しくて。  ――――……じゃあ今は? なんで、嫌とか、思うんだろ。  良く分かんないけど、でもとにかく。  オレ、いま、お前の事好きな女の子と、お前と、  同じテーブルにとか、座りたくないな。  啓介が行くっていうなら、今日は帰ろう。  そう思って、ちら、と啓介を見上げると。 「――――……」  ふ、とオレを見下ろして。少しだけ無言でオレを見つめてから。  啓介は女の子達に向かい合った。   「……堪忍。これから2人で大事な用があんねん。また今度な?」  啓介がそう言って、女の子達に断ってる。  オレは合わせて適当に頷いて。  何やらまたうまく言いくるめて、啓介は、女の子達を先に帰した。  なんとなく啓介と一緒に女の子たちを見送った。  もう、この階には誰も居ない。次の授業はこの階には無いみたいで、人気がすっかりなくなった廊下で、ふ、とオレを見つめた。 「……どーしたいん、雅己?」 「……オレんち、荷物、取りに行ってくれる?」 「ん、ええよ」 「――――……途中の店で、夕飯食べる?」 「……ええよ」  ふ、と啓介が笑って、頷いてくれる。 「じゃあ、お前んとこ、行く」  なんでか、すごくほっとして、啓介を見上げる。 「――――……」  女の子達、断って。  オレの我儘、まだ聞いてくれるんだ、と思って。  そしたら、なんだかすごく、ほっとした、んだと思う。 「いこ、啓介」  言って、歩き出そうとした瞬間。  急に、両頬に、啓介の手がかかって。  ぐい、と引かれた。  ――――……え。  背中を壁に押し付けられて。    「――――……けい……」  視界が暗くなって。  急に、唇が、重なってきた。

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