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「キス」

「――――……」  突然されたキスに、驚く。  だって、学校でって。今までだって、無かったのに。  ――――……急に、何のスイッチが、入ったんだろ、啓介……。 「……っ」  人の気配はないとは言っても、学校の廊下だから、いつ誰がくるか分かんないのに。そう思うけれど。  どうしても、抵抗できない。  重なるだけ。深く。  でも、舌は、入れてこない。 「――――……っ……」  ちゅ、と小さく音を立てて。  少し離れて、また、重なる。  頬を挟んでた手が、後ろに滑って、耳や首筋に沿って、触れる。  優しく、触れられてるだけなのに、ぞわぞわしてきて、首を竦める。  すると、竦めてない方の、首に、また触れてくる。 「や……」  離れようと退くけれど、そしたら、今度は、後頭部を押さえられて、また深く重なってきた。  繰り返されてる内に、なんだか息を詰めて、ちゃんと呼吸が出来てないせいか、頭、ぼうっとしてきた。  角度を変えて、深く触れ合うだけのキスが、すごく長く続いた。  ゆっくりと、離されて、は、と詰めていた息を、吐く。 「雅己……?」 「――――……」  ぼんやり、見上げると。 「――――……堪忍、こんなとこで」  ふ、ときまり悪そうに笑いながら、啓介が謝る。  最後に、唇を、親指でなぞられる。  ぞく、と、背筋が震える。けれど。  そこで、啓介は、ゆっくりと手を離した。 「……急に、なに……」 「せやかて……舌入れないキス、はええんやろ?」 「……っ……」  くす、と笑う啓介に、オレは、唇を噛んだ。  そうだけど……。  舌、入れなくても、 エロすぎるキスって、  何なんだよ……もう。  オレが言った、舌入れないキス、てのは、  もっと軽い、唇が触れる位の可愛いやつで……。  なんか。  体の奥が震えて、熱が無理無理呼び起こされるみたいな、そんなキスに。  なんだか、むかついて、少し離れてた啓介の胸を、ぐい、とさらに引き離した。 「こんなとこで何考えてんだよ……」 「……せやかて、雅己、全然抵抗せぇへんし」 「……っ……」  ……すればよかった。  久しぶりのキスだったからなのか、ついつい、受け入れてしまった。  ……もう。  なんか、体が、ムズムズするし。  ――――……っ……啓介のばか!  恥ずかしさもあって、ぷんぷん怒りながら、歩き出すけれど。  すぐに腕を掴まれて、引き戻された。背中が、啓介の胸に当たる感じで。 「……怒んなや」  クスクス笑われて、腕を掴まれたまま、啓介の隣に並ばされると。  ……まあいっか……と思ってしまう。  ……のは、なんで?  よくわかんねぇ。

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