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「何で?」

「……ちゃんと聞いててな?」  啓介が、まっすぐオレを見つめる。 「……オレが高校ん時に言わなかったのは……狭い世界やったからてのもあるし。確定してなかった、てのもある」 「――――……」 「……部活もやし、クラスも、友達関係も、めっちゃ狭くて、密接やったろ?」 「……うん」 「あんな中で、お前に好きやて言うて、嫌われたらと思うたら言えんし。お前だって、気まずすぎて嫌やろうし、オレらが避けあってたら、周りかて気になるやろうし…… それに、まだ、あの頃は――――…… めっちゃ、好きで、キスしたいとか……触りたいとか――――……そういうんは、かなりやばい事やと思うて抑えてたし。……本当にそうなのかは、よう分からんかった」 「――――……」  まあ。  ……言ってる事は、分かるので、うん、と頷いた。 「んで……大学ん入って、合コンとかするようになって、また、色んな女の子と付き合うてみてたけど――――…… 途中から……」 「――――……?……なに?」  そこで止まって、ちょっと言いずらそうにしてる啓介に、首を傾げると。 「……途中からは、合コンで、お前の方が気になって」 「……ん?」 「変な女に連れ込まれないかとか。 そっちの方が気になるようになって」  そう言われると、すぐに思い浮かぶ事が、ひとつ。 「……だから、お前、邪魔しにきてたの?」  そう言ったら、啓介がちょっと嫌そうに、苦笑い。 「……あ、分かっとった?」 「……なんか、誰かと良い雰囲気ぽくなってくると、なんか啓介がいっつも横くるなーとは思ってた」 「……うん。 まあ。そう、やな。そうしてた」 「……合コンで、何してんの、お前」  率直に思った事をまっすぐ伝えたら。 「――――……んな事言うても…… すまんとしか言えへんけど」  思い切り、苦笑いの啓介。  少し考えて。オレは。 「……正直、助かった、て感じもあったから、オレ、邪魔すんなとか言ってないけど……」 「――――……ん、言われてないけど…… 助かったて?」 「……やっぱりオレ、合コンとかで、すぐ相手見つけてどうにかなんの、やだったし。女の子と2人になって、良い雰囲気になってきちゃって、どうしようかなと思ってたら、お前来てたから…… ちょっと助かってた、というか……」 「――――……」 「……つか、お前はいっつも、誰かと消えてたくせに、どーなんだって、思うけど」  ふと思い出して、そう突っ込むと。 「……それは、最初の頃やろ? せやから、途中からって、言うてるやん」 「――――……」 「……雅己の事ばっかり気になって、女の子と付き合うてても、お前の事ばっか思い出すし。……それで、余計に色んな女の子、付き合うてみてたけど……」 「――――……」  ……あの、やけくそみたいに女の子と付き合いまくってた時かな……。  話を聞きながら、思い出す。 「で……その内、男でもそういう意味で好きやて、ほんまに思うてるのが、自分で分かったんやけど……」 「――――……」 「告白したんは……大学て、別に、自由やんか。授業の教室かて広いし、好きなとこ座れるし、受ける人数も多いし。もし、避けられて、友達でいられなくなっても…… 高校ん時よりは、お前も避けやすいやろ? もう、好きって言うてもええかなって。……もし、雅己がオレを拒否しても、離れる事もできるやろと思うたから……お前に言う事に決めた」 「――――……」 「まあでも、離れたいとか言わせたくないと思いながら、告白はした」  しばらく視線を落として、啓介の言った事を、自分の中で、考えて。  それから、改めて啓介を見つめると。 「……ここまでは、良い? 納得した?」  そう聞かれたので、「うん」と答えた。  啓介の、言ってる事は。  普通にちゃんと、分かって。  ――――……そこまでは、分かった。けど。  肝心なとこが、まだ分からない。  ……何で、オレを、好き???  友達として、じゃなくて。 「――――……あとは、何で、お前が好きか、やろ?」  そう言って、啓介は、またまっすぐオレを見つめて。  ふ、と笑った。 「……何でとか必要なん? ……オレがずっと、お前の事、一番好きなんは、お前が分かっとるはずやけど……」  緩む、優しい瞳に、どき、とする心臓。  伸びてきた手が、頬に触れた。  不意に近づいてきた啓介に、優しく、キスされる。 「――――……好きやなかったら、触らんよ……」  囁かれて、そのまま、唇が、重なってきた。   何度か、触れるだけのキスを、される。  全然動けず。  心臓、ドキドキしたまま。啓介のキスを受けて。   ――――……好きじゃなかったら……キスなんか……させないけど。  でも。まだ。納得できないし。  そんな風に思っていたら。  また、まっすぐに、見つめられた。

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