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「好き。だけど」

    オレを、好き。……て、思ってくれてるのは……。  目の前に居て、オレを見つめてくる、こういう啓介見ると、なんとなくいつも、分かってはいるんだけど。  ―――……だから、なんでなんだろう??  すげえ、モテるのに。  ……何でオレ……?   お前の事好きな奴なんて、いっぱい居るのに。  ……可愛い子もいっぱい、居るのに。  ……何でオレなのか、全然分かんない。  もう、そこだよな。  不思議すぎて、全然納得いかない。 「……何でオレなのか、分かんないし」 「――――……」 「だから…… 全部、お前のものなるとか……できないし」  オレがオレに納得のいかない全部。  言葉にすればするだけ、ああ、そうなんだなと思う。  好きだなと思っても、好きだと返せないのも。  抱かれるのを、好きだと思うくせに、全部さらけだせないのも。  お前が女にモテる、とか気になるのも。  素直に、引っ越してこれないのも。  多分それって。  今受け入れたとして。その後、どうなんのって、思ってるからだ。 「……オレの生活とかが、お前だけになって……いつか、無くなるのとか……無理だって思うし……」  お前が何でオレを好きっていうのか分かんないから。  いつか、オレ以外を好きになって離れてくのが、当然な気がするから。  オレ、お前との間に、敢えて、線を引いてるんだ。 「――――……」  啓介が、何も言わず。ただ黙ってる。  長いこと、静か。  ……あれ? と、ふと気づく。  なんか、オレ――――……すごい、重い事言った?  ……好きとか、全然ちゃんと言ってないくせに、  いつか無くなるのが無理とか。  ……あれ、なんかむしろ、好きとかよりも、もっとすごい事言ったんじゃ……。 「……雅己?」  啓介の、静かな声、 「……顔、上げて、オレの顔、見て」  いつもなら触れて、顔上げさせて、否応なく見させるくせに。  なんで、触んないんだよ。  そう思いながら、ふ、と見上げると。  視線があった瞬間、啓介がふ、と優しく笑った。  どき、とする。 「……オレの事、好き? いつもみたいにふざけんで、ちゃんと答えて」  まっすぐ、聞かれる。  ――――……ふざけて聞かれたり、どさくさに紛れて言わされたり、あったけど。こんな風に、まっすぐ聞かれると、やっぱり、焦る。 「……好き、だけど」 「だけどはいらんて」 「――――……好きだよ……でも」 「でも、も、いらん」  少しの間、黙って。 「……好き」  小さく、そう、答えた。  心の中では、まだ、「好きだけど」って言ってるんだけど。  エンドレスに同じやり取りになりそうだから、言うのは堪えた。 「ん」  ふ、と笑った啓介に、頬に触れられる。 「お前、前聞いた時も、好きかも、とか……多分、好き、とか」 「……」 「ほんま素直やないよなあ……オレの事、めっちゃ好きやろ?」  ちゅ、とキスされる。

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