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「昔からずっと」

「……堪忍」  謝ってるけど、笑ってるし。 「謝ってないよね……」 「可愛えから、無理。今のは、雅己が悪いやろ」 「……何がだよ??」 「お前からキスすんのも」 「……ちょっとしただけ、じゃんか」 「好きかもとか。……かもって何って感じやけど、でも可愛ぇ」 「……かもは、言葉のあや……」  ぐったりして、もはやなすがままに抱き締められていると。  啓介は笑った。 「何でさっきの話で、オレの事好きやってなったんか、ようわからんけど」 「んー……?? ああ、さっきの話……」  何だっけ。キスされて、全部ぶっとんだけど。  えーと……。 「……ああ、なんか…… 他の奴と比べられるとか嫌とか……もうその時点で嫌だなって思う奴も居たみたいで。和馬もそう思いかけてたらしいんだけど」 「雅己はなんて言うたの?」 「んー。ほぼ啓介と一緒。選んでくれたなら、そこからもっと好きになってもらえばいいじゃん、みたいな事言った」 「ああ。それでオレが同じような事言うたから、好きかも、か」  啓介はクス、と笑って、オレの頬にキスすると、そっと離してくれた。 「――――……でもオレらのが普通やない?」  しゃもじと茶碗を持ちながら、啓介がオレを見て。 「毎日さ、色んな奴と会うて、自然と比べてると思わん?」 「んー?」  みそ汁をお椀によそって、カウンターに置いて、啓介を振り返る。 「毎日会う奴いっぱい居るけど、そん中で、オレはお前と居たいって思うから居るんやし。どんな奴でも、自然と、色んな奴と比べて、好きな奴を決めてると思わん?」 「……まあ、そうだね」 「その女の子は、正直なんやないの? 言わなきゃええのに。ちょっと考えさせて、だけでええやん」 「確かに」 「でもそれで選んでくれたんなら、むしろオレは、ええと思う」 「――――……うん。そーだね」  ふ、と笑ってしまう。 「オレはさ、ただ何となく、考えてくれるならいいじゃん、て思っただけなんだけどさ」 「ん」 「……好きかもって言ったのはさ」 「うん?」 「……啓介と、色んな事話してきてる気がするけど……オレはお前が言う事が、いつも好きだなって思うかもなーって」 「――――……」 「違う事言う時でも、その考え方が好きかもって。今まで、嫌いって思った事、ないかもって、なんか、思ったんだよ」 「かもかも、気になるけど」  くす、と笑う啓介。 「……はっきり全部覚えてないと思うから、かもって言ってるだけ」 「ああ、そういう意味の、かも、なんや」 「そう」  返事をしながら、カウンターからテーブルへと料理を運ぶ。 「雅己、麦茶飲む?」 「うん」 「ええよ、すわっといて」 「うん」  啓介がコップを置きながらオレの目の前に座った。 「いただきまーす」  2人で手を合わせて、食事開始。  啓介は、ふ、と笑って、オレを見つめた。 「オレ、お前の事、嫌いって思うたこと無いって言うたよな?」 「あ、うん」 「一緒って事?」  ――――……そう聞かれると、ちょっと恥ずかしいけど。  ……でも、そうかも。 あ、また、かもって言っちゃった。 「うん。そう」  かもを付けずに頷くと、啓介は、ふ、と嬉しそうに笑んだ。 「――――……オレ、後で母さんに、引っ越しのこと、電話してみる」 「……ん」  啓介がますます嬉しそうに笑うのを見てると。  やっぱ、オレも嬉しい。  なんか。  色々認めて受け入れてしまうと。  ……オレってもしかして、昔からずっと啓介の事が好きだったのではないだろうかと。 ちょっと思ってしまう。

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