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「ドキッと」

「なー雅己、これどこ置く?」 「机の上ー」 「ん」  啓介のマンションの1部屋がオレの部屋になった。  家族が来た時とかに怪しすぎるので、オレの部屋にも小さめの畳めるベッドは置く事にした。啓介のベッドがでっかいし、そっちで一緒に寝ような、と誘われてるし、絶対そうなるんだと思うけど。  机と本棚、ベッドと、もともとついてるクローゼットに服を入れて、部屋のほとんどは埋まる。  でも、この部屋にはほとんど、荷物を取りに来る程度になりそうなので、十分。 「――――……」  ほんとに、啓介のとこ、来ちゃったんだなあ……。  ……なんか。  まだちょっと、フワフワしてて、嘘みたいというか。  実際引っ越ししちゃって、もう帰るマンション、無いんだけど、  なんか、すごく、不思議というか……。  ていうか。  オレ達って、これから、24時間一緒なのか。  ――――……。  ――――…… そう思っても、嫌じゃないって。  なんだかなー、オレってば。  そんな風に思っていると。 「ここらへんは、本棚に並べてけばええん?」  目の前に来て、しゃがんで段ボールの中をのぞき込む、啓介。 「あ、うん」  啓介を見上げて、そう返事をする。  何冊か手に取って、立ち上がって、本棚に並べていく啓介。  つーか。  ……暑いからって腕まくりしてた啓介の姿に。  ……なんでオレは、ドキッとするんだ。  ほんと。良い体してるなあ。ズルい。  ……いつも、抱かれる時、下から見てると、ドキド――――……。  ……って。  ……っバカなのか? オレ。  なんでこんな事、考えてんの。  今は、啓介、ちゃんと手伝ってくれてるのに。  オレの方が、不健全すぎる……。最悪……。 「雅己、そろそろ、昼食べる?」 「え。っあ、うん。いいよ」  急に振り返られて、ばっちりと、目が合ってしまった。  焦って答えながら、立ち上がる。 「何食べる? 買いに行く?」  部屋を出ようと歩き出した瞬間。  腕を取られて、引き戻されて。 むぎゅ、と抱き締められた。 「……啓介?」 「――――……なあ、雅己?」 「ん?」 「……オレの事好き?」  「――――……」  また、そういう事、急に、真顔で聞くし。  数秒止まってから、少しだけ頷く。 「――――……そかそか」  嬉しそうに笑った啓介に、キスされて。 「――――……めっちゃ好き」  囁かれて。  する、と頬を撫でられて。  そのまま壁に背を押し付けられた。 「……ちょっとだけ、付き合うて」 「――――……」  振り仰いだ唇に、キスされる。

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