94 / 233

「良かった」

「……ん――――……」  最初、触れるだけだったのに。すぐに、激しすぎるキス。  熱い舌が、絡んで、口の中をなぞって――――……。   「ん……っ……ぅ」  顎、押さえられて、より深くなる。 「……っんン……っ……」  うー……舌、入りすぎ…… ゾクゾク、しちゃうし……。 「啓介、もう……」  離そうと思って、胸に手を置いて力を入れるけど。  うなじのあたりを、大きい手に固定されて、啓介が覆いかぶさってくる。 「……っ……ん、んっ……!」  漏れる声は、もはや、喘ぎじゃなくて、抗議だ。  分かれー啓介―! 「――――……んぅ……! ……っぅ……っ……」  でも、抗議、長くは続かない。 「……っふ……っ……」  舌吸われて、ぎゅうっと瞳を閉じた時。  ふ、と笑んだ気配がして、最後に優しく、唇が触れた。 「――――……はー。ベッド、連れ込みたい」 「……っ……っ」  ぎゅーっと抱き締められて、そんな風に言われて、真っ赤になる、オレ。  啓介は、くっと、笑って。 「――――……後のお楽しみやな」 「……っ」 「昼食べて、早よ全部片づけて、シャワー浴びて、で、引っ越し祝いしてから、やな」  ぴた、と唇に指をあてられて。そこから、まっすぐ。  首からまっすぐ下になぞられて。下腹部からさらに下まで、つ、と触れた。  びく!と震えて、咄嗟に、腰を引く。 「……夜まで我慢な?」  くす、と笑った啓介の唇が、耳に触れて、ちゅ、と音を立てる。 「っ!!」  とどめとばかりのその行為にぞくっとして、真っ赤になったオレは。 「っ我慢じゃねーよ! 変態!!! エロ魔人!!! 最低!! エロエロ!!」  めいっぱい、叫んだ。  啓介は、ものすごく可笑しそうに笑いながら、「蕎麦があるから、引っ越し蕎麦にしよーなー」とか言って、部屋を出てった。  ……つか、オレ。最後の、エロエロって、何だ。  ……くそ。なんかアホみたいで悔しい。  語彙がなくなっちゃうんだよな、こういう時。   「雅己、蕎麦は茹でるけど、あと何食べる?」  全然平気な顔して戻ってきて、そんな風に聞いてくる。  ジロ、と睨むと、啓介は。 「あ、まだ怒ってたん? つか、顔赤い」  クスクス笑いながらまた近づいてきて、オレの、頬に触れた。 「あっつ……」  クスクス笑いながら、すぽ、と抱き締めてくる。 「べつにオレからかっとるんやないよ。ほんまにベッドに連れこみたいし。でもひっこしは終わらせたいやろうし、昼も食べないと。てことで、我慢してるっちゅー話」 「……セリフと行動が、恥ずかしいんだよっ」 「ああ……」  啓介はクスクス笑って、また、指を、つ、と顎に乗せた。 「これ?」 「――――……っっ」 「――――……そういう可愛ぇ反応するからいけないんやで?」  クスクス笑う啓介。 「可愛ぇんやもんなー……」  肩を抱かれて、ポンポンされながら笑われる。 「んで? 昼は? 蕎麦と何がええ?」  優しい笑顔で見下ろされて。ふ、と息をついた。 「……何がある?」 「んー……冷凍の天ぷらならある」 「何の天ぷら?」 「かきあげ」 「あ、じゃあもうそれでいい」 「ん。じゃあ準備しよ」 「うん」  2人でキッチンに向かって、一緒に昼食を作り始める。  色んな事、話しながら。    やっぱり。  ……こういうのをずっと啓介としてたいから。  来て良かった、なあ。  ……恥ずかしいのだけどーにかしてくれたらいいけど。

ともだちにシェアしよう!