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「オレんち」
「はは。お前ほんま――――……」
「何?」
「……いや。何でもない」
「何だよ?」
「女やない、とか。ムキになんの可愛ぇなーと」
「――――……」
可愛いのか?
よく分からないので、返事はせず、店を進む。
「もう今日は総菜買っちゃう? 疲れたよね」
「ん、ええよ」
「唐揚げ、 食べよ?」
「ん。 ポテトサラダも買う」
「うん」
2人であれやこれや今日の分と、とりあえず明日1日の食材を買って、家に戻った。
「雅己、先シャワー浴びてきて。オレ買うてきたもん片付けとく」
「分かった。ありがと」
啓介に言われて、着替えを持ってバスルーム。
シャワーを浴び出して、ふと、思った。
――――……あー。オレ。
もう、オレんちのシャワー浴びないんだな。ずっとここで風呂入んのか。
……って、もう、「オレんち」無いんだった。
ここが、オレんちか。
オレと……啓介んち。
もう、帰る事も、ない。ていうか、ここが、帰る所で。
ずっと、夜まで、一緒。……夜もずっと。
なんかそんな風に、考えてたら、一気に思考がそっちにいっちゃって。
急に、かあっと赤くなった自分。
うわ、なんで――――……。
誰にも見られていないのになんかすごく焦って。
熱くなった頬に触れる。
はー。
……ヤバいな、オレ。
シャワーを浴びて、大分冷ましてから、啓介のもとに戻った。
すぐにオレを見て、こっちに来て、ぽんぽん、と頭を撫でて。用意してたらしい水を渡してくる。
「オレもすぐ浴びてくる。ドライヤーかけたるから、待っとって」
「……うん」
もらった水を飲んで、椅子に座る。
……やっぱり、オレに、甘すぎ。
ふ、と息をついて水を飲み終わると。
さっき片付けた自分の部屋に行って、なんとなくベッドに腰かけた。
「――――……」
啓介と、こんな事に、なるなんて、
自分が、男と、一緒に生きてこうと思うなんて、
思いもしなかったなあ……。
高校で会った時から、かなり好きだったけど。
こんな形の好きになるなんて。
膝に肘をついて顎を乗せて、ぼーー、と部屋を眺めた。
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