96 / 244
「オレんち」
「はは。お前ほんま――――……」
「何?」
「……いや。何でもない」
「何だよ?」
「女やない、とか。ムキになんの可愛ぇなーと」
「――――……」
可愛いのか?
よく分からないので、返事はせず、店を進む。
「もう今日は総菜買っちゃう? 疲れたよね」
「ん、ええよ」
「唐揚げ、 食べよ?」
「ん。 ポテトサラダも買う」
「うん」
2人であれやこれや今日の分と、とりあえず明日1日の食材を買って、家に戻った。
「雅己、先シャワー浴びてきて。オレ買うてきたもん片付けとく」
「分かった。ありがと」
啓介に言われて、着替えを持ってバスルーム。
シャワーを浴び出して、ふと、思った。
――――……あー。オレ。
もう、オレんちのシャワー浴びないんだな。ずっとここで風呂入んのか。
……って、もう、「オレんち」無いんだった。
ここが、オレんちか。
オレと……啓介んち。
もう、帰る事も、ない。ていうか、ここが、帰る所で。
ずっと、夜まで、一緒。……夜もずっと。
なんかそんな風に、考えてたら、一気に思考がそっちにいっちゃって。
急に、かあっと赤くなった自分。
うわ、なんで――――……。
誰にも見られていないのになんかすごく焦って。
熱くなった頬に触れる。
はー。
……ヤバいな、オレ。
シャワーを浴びて、大分冷ましてから、啓介のもとに戻った。
すぐにオレを見て、こっちに来て、ぽんぽん、と頭を撫でて。用意してたらしい水を渡してくる。
「オレもすぐ浴びてくる。ドライヤーかけたるから、待っとって」
「……うん」
もらった水を飲んで、椅子に座る。
……やっぱり、オレに、甘すぎ。
ふ、と息をついて水を飲み終わると。
さっき片付けた自分の部屋に行って、なんとなくベッドに腰かけた。
「――――……」
啓介と、こんな事に、なるなんて、
自分が、男と、一緒に生きてこうと思うなんて、
思いもしなかったなあ……。
高校で会った時から、かなり好きだったけど。
こんな形の好きになるなんて。
膝に肘をついて顎を乗せて、ぼーー、と部屋を眺めた。
ともだちにシェアしよう!