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「楽しい」

「美味しい―、紅茶」 「そら良かった」 「チョコも美味しい。美味しいだろ?」 「せやな」  啓介にも食べさせて、2人で微笑んで。 「はー。早くテスト終わんないかなー」 「1週間頑張れば終わるし。そしたらもうすぐ夏休みやもんな」 「楽しみすぎる。夏休み何する?」 「何しよか」 「旅行しよ。バーベキューしよ、花火もしよ、キャンプも。バスケも。プールも」 「って遊んでばっかやな」  思いつくまま並べていくと。啓介に笑われた。 「だって大学1年の夏休みだよ? 試験も終わるし。他に何すんの?」 「アルバイトせえへん?」 「アルバイト?」  意外な言葉。  オレんちも啓介んちも、勉強をおろそかにすんなと言われて、普段のアルバイトはむしろしなくていいと言われてる。 「やっぱ働いとくのもええと思うんよ。色々知れるやろうし」 「何のバイトすんの?」 「どうせ夏の間やから――――……海の家とか楽しそうやない?」  海の家。  うん。楽しそう。 「それって、住み込みですんの?」 「そう。住み込みで一定期間。繁忙期だけっちゅうとこもあるし。あとは、夏のイベントの手伝いとか」 「へえーそうなんだ。色々あるんだね」 「雅己も一緒にやろ」 「え。一緒に応募できるの?」 「できるとこもあるから」  やってみたい。  ウキウキしてきて、笑顔でうんうん頷くと、啓介も楽しそうに笑って。 「そしたら色々調べて、いいとこ探そ」 「うんうん。楽しそう」 「まあ、遊びやなくて仕事やけどな」 「だって啓介とだろ?」 「――――……」 「一緒に何かして、楽しくなかった事、ないもん」  だからきっと、楽しいはず。  そう言って、ふんふん鼻歌気分で紅茶を飲んでると。  啓介が何だかとっても苦笑い。 「啓介?」 「――――……オレと一緒なら、楽しくないこと、無いん?」 「え? …………ああ、うん。無い、と思う」  あ、オレまた、結構恥ずかしい事言った?  ――――……言ったかも。 「……あー。っと……」 「ん?」 「なんか……ちょっと恥ずい事言った、かもだけど……」 「ん」  クスクス啓介が笑う。 「……まあ。でも。……啓介と一緒だと、楽しいのは、ほんと」  否定してみようかと思ったけれど。結局できず。  そう言ったら。ぷ、と吹き出した啓介によしよしと撫でられ。 「オレも、ずっとそうやったけど」 「――――……」 「お前、時たまほんま、何も考えず、素直やなー」  ちゅ、と頬にキスされて。  啓介を見上げると。唇にキスされて。  なんかまたいっぱいキスされる羽目になったのだけど。  ……うーん。これはオレがいけないんだよなーと。  くすぐったいからと、藻掻きながら。  笑ってしまった。   

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