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「なんとなく」

 しばらく、啓介の事、盗み見ながら、ぼーーと考えていたら。  目の前の啓介が、ふっと、笑い出した。 「啓介?」 「――――……見すぎ」  静かに、でも、肩揺らして笑ってる。 「いつまで見てんのかなーと思うたけど。ずっと見てんのやもん」 「あー……」  また、バレてるし。お前の目はどこについてんだ。 「……何? もう、飽きた?」 「飽きたんじゃなくて、一通り、結構進んだの」 「ふうん? そーなん?」 「うん。そう」  うんうん頷いて見せると。  まだ笑いながら。 「そんで、何でオレに見惚れてんの?」 「べ。べつに。 見惚れてた訳じゃ……」  言いながら、ふい、と視線をそらしてしまう。そんな事したら、バレバレなのに。でも、平気で見つめてる事も出来ず。  案の定、また笑われるし。 「まー……雅己が見惚れてくれてのんは、嫌やないから、ええけど」 「……見惚れてない」  クスクス笑いながら、啓介は、教科書をまとめだす。 「なんか昼食べにいこ、雅己」 「あ、うん」  急いで片づけて、啓介と歩き出す。  図書館を出ると、またいつもの空気感。 「静かなのもたまにはいいけど、やっぱり声出せた方がいいなー」 「せやな」  クスクス笑って、啓介はオレを見つめる。 「午後も図書館行く?」 「うん。いーよ。じゃあここらへんで食べちゃう?」 「んー……せやけどここらへん……ああ、駅前の方行くか?」 「でも今、混んでそう」 「せやなーちょうど昼時か……」  公民館の前の広場に、ベンチと芝生と木陰が見える。 「コンビニで何か買って、あそこで食べよ?」  啓介はオレの視線の先を追って。  「ああ、ええよ」と笑んだ。  近くのコンビニで、おにぎりやサンドイッチと飲み物を買って、ベンチに腰掛ける。 「ここ結構、木陰良い感じ」 「ん。そーやな」 「いただきまーす」  言いながら、おにぎりを頬張るってると、啓介が覗き込んできた。   「今日は鮭?」 「うん」 「いつも鮭かツナやな?」 「うん」  ふ、と啓介が笑う。 「啓介はいつも違うよなー」 「色んなの食べたい」 「ふうん」 「でも結局、いつものがうまいって結論になるんやけどなー」 「うん。啓介はいつもそんな事言ってる」    頷きながら笑ってしまう。     「――――……」  ひとしきり笑ってから。何となく黙ったまま。  おにぎりを食べながら。 「……けーすけ」 「ん?」 「――――……たのしー、な?」  何だかすごく、そう思って。  図書館で勉強して。  木陰のベンチで、コンビニのお昼食べて。  これからまた、図書館で勉強する。てだけなのに。  何だかすごく。  全然特別じゃない、なんとなくの時間。  楽しいなあと思って、そう言ったら。  啓介はオレをじっと見つめて。 「ん、せやな……」  と。なんだかとっても穏やかに笑った。その笑顔に、うん、と、頷いた。   ――――……ずっと、こんな風に居れたらいいなぁ。  なんて思いながらの、のんびりお昼時間になった。

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