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「普通なら」

 今日、5限の授業は啓介と別だった。  オレだけ休講になって、先に帰ろうかなーと思ったけど、待っとって、と啓介に言われた。  まあいっか。でも1コマ暇だなあ……。 「近くにあるカフェで、美味いコーヒーでも飲んでたらどうや?」  そう言われて、ん、と頷いて、学校から歩いて5分の、このカフェに来た。  カフェオレにアイスが浮かんでる飲み物を頼んで。  すんごくうまーい、とごきげんになりつつ、  持っていた本に目を落とした。 ◇ ◇ ◇ ◇  もーすぐかな……。  オレは、読んでいた本を閉じた。  ちょうどスマホを持った時に、啓介から。 「今終わった、ちょっと購買寄るから、10分位待ってて」 「うん」  返事をしておいて、残っていたカフェオレをストローで啜る。  何となく店内に目をやる。  良い店だなー。  多分大学の女子かなーて子達が何組か、仕事の休憩中っぽいサラリーマン、それから子連れのママ達。さっきまではそれ位しか客が居なかった。  でも今ふと気づくと、いつの間にか結構混んでる。  待ち合わせて、出会うカップルが、目に入る。  ちょっとカッコイイ男と、キレイな女の子の、いわゆる美男美女のカップル。そこでふっと、急に思った。  自分が見てるのは、どっちだろう、と。  ……普通なら、女の子を見るべきなのだろうけど。  ――――……実際に、自分は啓介と付き合ってる訳だし。  同性を、そういう意味で 好きで、体の関係まであるのは、確かな事実。  て、事は?  オレにとって、他の男もその対象になる……?  そこまで考えて、何となく、ブルブルと首を振ってしまった。  いや。無いな。  全然無い。  ……やっぱり、基本的には、オレは、女の子の方が好き。  啓介以外の男とは、どうも、想像すら出来ない……。  つーか。 ……したくもねえ。  じゃー何でオレは あいつとつきあってんだろう?  ――――……やっぱり、わかんないなぁ……。  啓介が聞いたら、何やそれ、まだわからんのって、てまた言うかなあ。  ――――……よし。  品評会、開始。  ちょうど店の出入り口が見える位置に座っていた。  しかも、隣との目隠し用の緑がすぐ隣りに置かれていて、相手からは見えない。  批評される相手には迷惑な話だと思うけど、別に心の中だけの事。関係ないや……。  肘をついて、アゴを乗せ、ドアが開くのを待つ。  まず1人目。  営業マンかな。スーツを着た若いサラリーマン。  オレよりもいくつか年上に見える、男。  うん、まあ…… 悪くは、ない。  ――――……けど……。無いなあ……。  2人目は、キレイに着飾った女の子。  ミニスカートから見える脚が、とてもキレイだな~と思いつつ。  ……うーん……??  3人目。   髪の毛ぼさぼさの、身なりに無頓着過ぎる、男。  ――――……悪いけど、却下。  4人目&5人目。  女の子同士。  可愛いけど。オシャレだし――――……うーん?  6人目。  お、こいつは 見た目は カッコイイ。そこまで合格。  けど。――――――――……。  やっぱり、キスしたりとか、そういう対象には、ならない。  ……勝手に考えて、ほんとに悪いと思うけど、想像するのすら気持ち悪い。  うーん。  ――――……啓介は、なんで良いんだろ。  思えば、最初にキスされた時から、気持ち悪いとかは無かった。  キスや触れられるのが気持ち良くて、どうしよう、どこまでされちゃうんだって思ったまま――――……。  ……啓介は良い奴。  一緒に居ると、すごい心地良い。  優しい雰囲気で言葉が紡がれて、それが、すごく、好きだな~と思う。  思うけど、別にそれは恋愛感情じゃなくても、いいような気もする。  友達としてすごい好きな奴、で良かったような気も、する。  じゃあ、何で?  何で、オレは、あいつと抱き合う???  啓介に求められて、最初流されて。  ――――……めちゃくちゃ色々考えた結果、今は覚悟をして、一緒に暮らし始めてしまったりしたけど。  やっぱ……うーん。どうして最初から平気だったのかは、わかんねえな。 「――――……」  ぐるぐるぐるぐる。  頭の中を巡る色んな気持ちに、対処しきれなくて、思わず俯いて密かに唸っていると。  また、入り口のカランコロンという聞き心地の良いチャイムの音。  あ、誰か来たな。7人目――――……。

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