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「シラフじゃ無理」

 今日も学校から帰ってから、テスト勉強中。  ちょっと何か飲み物入れてくると言った啓介が、戻ってきた。   「コーヒー淹れ直したから。飲んで」 「うん……カフェオレ?」  そう言うと、ふ、と笑って、「ブラック」と言われた。  えー無理……牛乳入れていい?と言ったら、啓介はクスクス笑いながら、オレを見下ろした。 「カフェオレ」 「ありがと」  差し出してくれたカップを手に取る。少し冷ましながら一口。 「うまーい……」  ぷ、と笑った啓介はオレの頭を撫でてから、オレの目の前に座り直す。 「啓介のもカフェオレ?」 「ブラック」 「……苦くねえ?」 「コーヒーやからな……」 「……ん? なんで笑ってんの?」 「お前のは、コーヒーてより、牛乳にちょっぴりコーヒー入ってるみたいな。それは苦くないやろなーと思うて」  言いながら、クスクス笑ってる。 「なんかバカにしてる?」 「いや? 可愛ぇなと思てる」  ……何言ってんだ。 「啓介、ちょっと飲まして、ブラック。目、覚めるかな……」 「ん、えーよ」  はい、と渡され、代わりにオレのカフェオレをとりあえず啓介に渡す。 「啓介も飲んでいいよ」 「――――……ん」  クスクス笑いながら、一口飲んでる。 「美味し?」 「ん、まあ」  ふ、と笑ってる啓介を横目に、啓介のブラックを一口。  ……うん。まあ。……コーヒー、だな。  飲めない事は、ない……。いや。  ……やっぱり、にっが。うぇ。  自分がしかめっ面になってるのが分かる。 「ありがと、返す」 「ん」  啓介のカップを返すと、代わりにカフェオレが戻ってきた。  こく、と一口飲んで、美味しーと、笑顔になってしまう。 「――――……雅己」 「ん?」 「少しだけ。おいで」  くいくい、と手招きされて。  ――――……なんとなく察知するんだけど。  まあ別に、いっか。  なんて思って。  カフェオレをテーブルに置くと、膝で立って啓介の方に近付く。  啓介の手が、オレの後頭部に回って、ぐい、と引っ張られて。  唇が重なった。そのまま、啓介の腕の中。  最初は、優しいキスで。  触れるだけ見たいな感じだったんだけど。 「ん……っ――――……」  舌が不意に入ってきて、絡められる。 「んん……? っん……」  思ってたよりずっと、キツくなっていく。  ……何なんだ、啓介。 「――――……っん……」  ぞく、と快感が走る。  ――――……啓介のキスがエロイからいけないんだ。 「やめ……まだ、勉、強――――……」 「――――……ん」  クス、と笑った啓介が、ゆっくりキスを離す。  ぽふ、と抱き締められて、むー、と膨れてしまう。 「……なんなの。途中から、きついんだけど」 「なんや、キスしてて、幸せそうにしとるから。可愛えなーと……」  クスクス笑った啓介に、ちゅ、と頬にキスされた。 「……顔、赤」 「るさい」  ……バカなのか、啓介。  なんかすげえ、恥ずかしいっつーの。バカ。もう。バカ。 「勉強するか、しゃあない……」  しゃあない、じゃない。もう。  バカ。  はー、とため息をつきながら。  こんな一瞬でゾクゾクしてしまった感覚を飛ばしたくて、頭を少し振ってから。啓介の向かいに座った。 「早く勉強終わらして、ベッドいこ? 続きしよ」 「――――……っ」  もうほんと、嫌、こいつ。  啓介は楽しそうに、クスクス笑うけど。  シラフでそういうのに答えるのは、やっぱ、まだ無理なので、オレはひたすら無視して、教科書に向かった。

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