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「だ。だ。だ。」

「んー……雅己?」 「――――……」  やだ。もう。話しかけんな。バカ。 「なあ、雅己。どーてーって……経験の話?」 「……っ」  わーもーしゃべるなー!  バカーー! 「――――……」  頑なに反対向いて、膝抱えて丸まって座ってると。 「んー。……童貞やっちゅうことに、気づいたん?」 「――――……っ」  小さく、一度だけ頷いた。 「……ていうか、気づいてなかったんか」  なんか、静かにそんな風に言われると、オレがアホみたいで、嫌。 「っ知ってたけど……っ……なんか、改めて……」 「改めて、考えてしもたん?」 「……浩平に、言われて――――……」 「あぁ。言われて、改めて、気づいたのか」  ふーん。と後ろで啓介が頷いている。  しばらく、二人とも無言。  変なの。  ラブホに来て、二人で風呂に居るのに。オレは背を向けて、無言、なんて。 「雅己、こっちむいて?」 「――――……」 「顔見て、話そ」  からかう気はなさそうな口調なので、オレは、ゆっくり啓介を振り返った。 「……それはさ、童貞なのは、嫌やって話?」 「――――……」  思わず、口、むっとしてしまう。  うん。まあ。 「……何となく、嫌」 「――――……うーん、そぉかー」 「……でもだからって……女の子と、したいかって言われたら、違う、んだけど」 「――――……違うん?」  啓介の声が、ふ、と優しくなる。 「……だって。オレ、啓介と付き合ってるのに。それしちゃダメだよね」 「――――……はは。雅己」  クス、と笑って、啓介は、オレの片頬を、手で包むみたいに触れた。 「ほんま、可愛ぇなー、雅己」  クスクス笑いながら、そう言って。 「――――……んー」 「…………」 「提案。なんやけど」 「……うん」 「――――……オレにしてみる?」  啓介が、そう言った。  ……??  頭の中で、その言葉が、ぐるぐる回ってる。  ん? 「……もっかい、言って?」  そう言うと、啓介が、すりすりとオレの頬を撫でながら。 「――――……雅己が、オレにしてみる?」  ……えっと。  オレが?  啓介に?  してみる、とは? 「……何、してみるって?」  さっぱり分からず、そう聞いたら。 「どんだけ、お前の中に、その可能性がないねん……」 「?」  よく分からない事を言って、 啓介が笑ってる。   「せやから――――……お前が、オレを抱いてみる?て、言うてんの」 「オレが啓介を、だい――――……」  だいて、みる? 「……え゛!?」 「あ。やっと通じた」 「だ、だ、だい……」 「――――……っ」  啓介が、そこで、オレから急に顔を背けたと思ったら。  口元押さえて。肩を揺らしてる。  っ顔隠れたって、笑ってんの分かってんだよ!  なんなんだよっ笑うなよっ! 「ははっ――――……もう何なん、お前……」  涙浮かべてるし。そんな勢いで笑うんじゃねーよ!! 「啓介が変な事言うからじゃん!!」 「せやかて、お前童貞は嫌で、でもって、浮気も嫌やて言うてくれてるんやったら……オレとするしか、ないやろ?」 「……っっっっっ」  啓介と、する?  啓介を、オレが??? だ。だ。だ。…………。だ……。  頭の中ですら、言葉に出来ない。 「……っ嫌でしょ、啓介っ」 「――――……んー。まあそりゃ大喜びって感じやないけど」 「――――……っ」 「雅己、いつもオレに抱かれてくれてるし。 オレが絶対嫌やって言ったら、悪い気がする」  ――――……っっっばかーーーーー!!  そこは悪い気、しなくて、いーから !!!  悪くないからっっ……!!!  もはや頭の中は、童貞とか吹き飛んで。  オレが啓介をという、死ぬほどとんでもない映像に占められそうになって、必死に抵抗中。 (2022/5/23) 昨日ブログ書いてます♡ このお話の表紙を頂きました……(*'ω'*)♡♡

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