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「お得な」

「――――……ゆっくり走れよ!」 「んー?」 「揺れないように走れよ!!」 「んな無茶な……」  バイク、啓介の後ろに乗って、叫ぶと、啓介が苦笑いで答えてくる。  もー、ふざけんなふざけんな。  たった25分。  ……ていうか、15分位?で。めちゃくちゃ激しくされて、あっという間に、訳わかんなくなって。死ぬほど、気持ちよくなっちゃったまま。  延長する?て言われたけど、もうやだ!って言って、服着て、出てきた。  ラブホのあの雰囲気の中にいたら、きっと啓介、居たら居ただけ、絶対するんだ!! もう!!  啓介のばか! もう!!  しかもなんかほんと、まだ、違和感ありまくりの。  バイクの振動がなんかもう……!!  啓介のばか―!!  ぎゅう、と啓介にしがみつきながら、心の中で叫んでると。  信号で止まった時、啓介がオレを振り返った。 「ご飯食べてこか」 「……うん」 「何食べたい?」 「もうなんでもいいから早く食べれるもの――――…… ラーメンは?」 「ええよ。じゃどっかラーメン屋でとまるわ」 「うん」  くっそー。ふつうの顔しやがってー!  ……って、オレもついつい普通に話しちゃったけど。  お前はいーけど、オレはまだ体ン中、変なままなんだからな!!  どうしてくれるんだもう。  ていうか、大体、さっきの、オレ、何がいけなかったの。  無理矢理……ってアレって、ほぼ無理矢理だよな。絶対、無理矢理だよな。  だから無理矢理、入れられる前、オレは……。  ドーテイっていうのを、もう気にしないようにするって、伝えたんだよな、確か。こだわらないからって。伝えておこうと思ったんだし。  そんで何で、あんなことになっちゃう訳なの。  啓介、自分が悪いか、誰かに聞きたいとか、訳わかんないこと言ってるし。  悪いに決まってるじゃん。  ていうか、オレにどんな悪いとこがあるんだ。もう。  啓介が道路の途中で止まって、ウインカー出してて、その方向見ると、美味しそうなラーメン屋さん。  あ、なんか、うまそう。  一気にお腹が空いてきた気がする。  啓介がバイクをとめて、オレはそこから、下りて。  ――――……まだなんか、変な感じ……。  ぽわぽわーとした感覚と。足から力が抜けそうな。  ヘルメットを取った顔を見た啓介が、ちよっと口をむ、とさせてから。 「……まだ色っぽい顔しとるし」  苦笑いしながら、オレの頬を、ぐい、と摘まむ。 「……っ誰のせいだよ」  言うと、啓介は、嬉しそうに笑って。 「お前にそんな顔させんの、オレだけやもんな」  ――――……何言ってんだと思うけど。  そんな嬉しそうに笑われると、否定できないというか……。 「――――……雅己?」 「ん?」  ヘルメットを啓介に渡しながら、見上げると。 「……ほんまにさっきの、もうええん?」 「いい。――――……もしなんか聞かれたら、オレ、経験あるって、言うから」 「――――……」 「……多分、あんなになるのって、そうそうないと思うんだよね」 「ん?」 「だってさ、お前としてても、オレの方が、ダメージデカいってことはさ」 「……?」 「多分、お前より、オレの方が気持ちいいってことじゃん? なんかオレ、今だって体っていうか頭っていうか、なんかおかしいしさ」 「――――……」 「だから、お得なのかもって、思う事にするから。大丈夫」 「――――……」  啓介が、何だか険しい顔でオレを見てる。  え。何で怒ってんの。 「……? あ、それに、どう考えても、オレ、お前にそんな事出来ないから。で、浮気すんのもありえないから。――――……だからもう、これっぽっちも、考えてないよ」 「――――……」  全部ちゃんと伝えてやったというのに、なんだかものすごく険しい顔で、見つめられる。 「え……つか、何で怒ってんの???」 「……怒ってはない」 「……じゃその顔なに? オレがもういいって言ってんだから、それでいいじゃん??」 「――――……はー……ほんま、お前は……」 「何だよ?」 「ここでオレがむりやり突っ込んでも、文句いわれる筋合いないと思うんやけど」  とんでもないセリフを言われて、は?と、めちゃくちゃ眉を寄せて、啓介を見上げる。 「ていうか文句しかないからなっ、それ。なんだよもう」  こんな変態は置いといて、ラーメン食べよう。  店に向かって歩き出すと、啓介がなんだか、離れても聞こえるため息を付きながら後をついてくる。 「なにもう、感じ悪いぞ。早くラーメン」 「……はいはい」  今度はなんだか笑ってる。  よく分からないけど。  まーもーいいや。  なにラーメン食べようかなあ。  醤油かなぁ。味噌かなあ。  んー。味玉つけよー。

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