155 / 244
「昔から」
皆と別れてきて、啓介と、マンションまでの道を歩く。
「すごい楽しかった」
「せやな。もう勉強のこと考えんでええしなー」
「うん。すっごい食ったー」
「確かにお前、めっちゃ食うてた」
そう言いながら、啓介がクスクス笑う。
「甘いのも食うたやろ」
「うん。なんかもう、生クリームで気持ちわるい」
「太るんやない?」
「今日だけ」
「とか言いつつ、いつも食うてるし。オレと一緒に筋トレする?」
「んー……ちょっとなら付き合うー」
「ほんまはジョギングするんがええと思うけど」
啓介の言葉に、ちら、と見上げる。
「え、オレ、そんなに太ってる?」
そう言うと、啓介はぷ、と笑った。
「太ってへんわ。むしろ、細い……って、そういうのって、自分で分かるやろ」
「……うーん、太ってはないかもだけど、啓介みたいに、ムキムキしてないし。鍛えられてないっていうかー……」
「そう? 筋肉も割とついとるし。綺麗やけどな」
「綺麗言うな」
「――――……そういやプールの時とか、めっちゃ綺麗やって思って、まともに見れんかったの、思い出した……」
「ええっそうなの?――――……きもいー、啓介ー」
「はあ? キモイとか言うなや」
「オレは、そんな目で見られてるのも知らずに、プール楽しんでたのにー」
「せやからあんまり見てないて」
「だって、そういう風に見ちゃうからでしょ」
むむむ。
ちょっと口を噤んでから。
「……ていうか、啓介って、ほんとに、オレをそう言う意味で、好きだったんだな……」
「せやけど。ちゅーか、何度話せば実感してくれんの」
クスクス笑って、啓介がオレをちら、と見下ろす。
きもいは、もちろん冗談だったんだけど……。
んー。なんか……。
ちょっと、少し、切ないような、申し訳ないような、変な気持ちになってくる。
「なんかさあ、啓介……」
「ん?」
「……辛かった??」
「――――……」
何となく、聞いたら、啓介がオレを見て、固まってる。
「……何が、や?」
「――――……んー。なんか。……オレが全然気づかなくてさ。1人で、そういうの思ってたの……」
「――――……辛かった……どうやろ。高校ん時は、否定して彼女作ったりしとったし……大学も新しい出逢いがあればきっと、とか思うてたし」
「――――……」
「……お前と友達でいるのも、バスケ一緒にやるんも、楽しかったし。……別に、辛かった訳やない、かな」
「――――……」
啓介が少し笑うので。
そっか、とオレは、頷いた。
不意に伸びてきた手に、頭をめちゃくちゃ撫でられる。
「わー、何すんの、髪ぐしゃぐしゃ――――……」
もー、何なの、と啓介を見上げると。
なんかめちゃくちゃ、笑顔。
「好きやで、雅己」
最後にまたよしよしされて、オレは、固まるしかない。
「早よ、帰ろ」
なんだかご機嫌の啓介が少し先を歩き始める。
「――――……っ」
もー。はずいな、ほんとに。もう。
そんな笑顔で、好きやでとか、言うな。もう。
思いながらも。足早に、啓介に追いついて、また隣で、歩き始めた。
今日は、月が、すごく綺麗な気がする。
ともだちにシェアしよう!