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第266話「キスするために?」

「―――……っ」  啓介が手首を押さえたまま、オレの指に舌を這わせる。  ――――……啓介がオレを抱く時。たまにする行為。  不意に感覚が甦ってきて、ギュ、と目を閉じる。 「雅己……?」 「……っ――――……」  いつの間にか、オレの指から舌は離れて――――……。  頬に触れられて引き寄せられて、啓介の唇が、唇に重なってくる。 「……ん、ぅ……」  深いキスに、ますます感覚が鋭くなる。  ぞくぞくしたものが背筋を走る。  しばらくキスされて、啓介の服に、ぎゅ、としがみついた時。  ゆっくりと唇を離しながら、啓介がクスッと微笑んだ。 「すぐ、とろんてするなぁ?」  目を細めて笑いながら、頬を撫でながら、首筋に手を触れさせてくる。 「……な、んなの、マジで」  上がってしまった息を押さえながら、オレが眉を寄せて啓介を睨むと、啓介はクスクス笑ってまた抱き寄せてくる。 「……雅己の指、ほんまキレイやなぁて、思て」  言われた言葉に、オレは目を丸くする。 「……っそんなんで、人の指なめンなよっ!」  何してくれんの、ほんとに! 「……このまま押し倒したい気分」 「……っぜってーだめ」  朝からこんな所で突然されたこんな行為に、思いっきりその気にさせられてしまった事が悔しくて、オレは、オレを見つめてくる瞳を、睨みつけた。  啓介は、苦笑い。 「分かっとるけど……」  ぐい、と腕を掴まれて引き寄せられてしまって。 「……っん……?……」  再び、キスされる。 「……っ……ぅ……」  遠慮も何もないディープキスに、感覚が飛んでしまいそうな気がする。  オレがギュッと目を閉じた途端、唇が離れて……最後に唇を舐められる。 「……ふ……」  声が漏れて。一生懸命息を整えてるオレの髪の毛を、啓介は撫でてる。 「……まあ、しゃあない……食べよか」 「……っ……もう、ほんと、啓介……いいかげんにしろよっ」 「ん?」  お前のキスとかって、そーいう事に直結するんだよ!!  もーっっ!  中途半端にオレを煽って離すのとか、マジひどい! 「もー、ベッド以外で、キスすんの禁止」 「は? ……嫌やけど?」  ものすごく嫌そうな顔で見られる。 「……っ嫌なの、こっちだっつーの!! 絶対禁止!」  いつでもどこでも、エロ魔人ー!   朝から、アホかー!  心の中で必死に叫びつつ、パンを口に頬張る。 「何で禁止なん?」 「……るさい」 「感じてまうから?」 「……っ黙って、食べろよ」  もう、バカ。  啓介のバカ。 「――――……雅己にキスするために生きてんのに」 「……お前ほんとに、バカなの?」  思わず本気で冷たく言い捨てたオレに、  啓介はおかしそうに、笑う。

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