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「ピンクの空」3

「雅己、ちゃんと飯食えや? あとちゃんとドライヤーして。ソファで寝んなや?」 「うん」 「遊びに行っても良いけど、そんな遅くなんなや?」 「うん」 「冷たいもんばっか飲むなや?」 「うん」 「クーラー冷やし過ぎないで」 「うん」 「あとは――――……」  もう、苦笑いしか浮かばない。 「分かったってば」  しかもこの内何個かは、さっきも聞いた。 「啓介、たった二日間、オレ、ちゃんと生きて待ってるから」 「――――……」 「お前こそ、気を付けて行ってこいよな?」 「ん」  ぎゅー、と抱き締められる。  何なんだ、啓介。  ていうか、お前、ほんとにオレと離れらんないのかな……? 「なー、啓介」 「ん?」 「オレ、今日明日は家に居るから。こないだ買った本も読みたいし。ゆっくりしてる。散歩がてらご飯買いに行く位はするかもだけど」 「――――……」 「だからいつ電話しても出るから。啓介が空いてる時、連絡して」 「――――……ん、わーた」  むぎゅぎゅ。  抱き締められる。  と思ったら。少し離されて、深く深く、キスされた。 「……ん、ん、ンっ……」  いつまでしてんだ、と訴えるけど、全然離してくれない。  めちゃくちゃ息が上がってから。やっと、離された。  仕方なさそうにオレから離れて、靴を履いてから、また振り返った。 「――――……行ってくる」  むぎゅ、とまた抱き締めて。じっと見つめられる。 「電話するから」 「ん、あ、なあ」 「ん?」 「地元帰るんだからさ、友達とか会ってくれば?」 「――――……」 「久しぶりなんだし」 「――――……ん、考えとく」 「うん。いってらしゃい」 「雅己」 「ん?」  そっと頬に触れて、啓介が笑う。 「大好きやで、雅己」  言った啓介に、最後にまたキスされて。 「行ってくる」 「……うん。いってらっしゃい」  バイバイ、と手を振った。ドアが閉まる。  鍵を掛けて、玄関から離れて。  ソファに座った。  何か――――……しばらく会えない位のお別れ、してったな、あいつ。  ……恥ずかしいな、ほんと。  大好きやで、じゃないっつーの。  もう……。  顔、熱い。  ――――……顔熱いっつーのは。  恥ずかしいって事で。  ――――……嫌じゃないって事で。  ほんとにもう。  何なんだ。  クッションを抱いて、ソファに倒れた。  二日間かー。  ――――……とにかくすっげえ、静かそうだなあ。  とりあえず、まあ。  ゆっくりするか……。  

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