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「昨日の朝以来」

「啓介、ご飯どっかでたべてこ? 何が良い?」 「雅己が食べたいもんでええよ」 「んー。じゃあ……回転寿司が良い」 「ええよ。いつもの店?」 「うん」  クスクス笑った啓介と、一緒に歩き始める。 「楽しかった? 大阪」  隣の啓介を見上げて、オレはそう聞いた。 「ん、せやなあ。久しぶりに会うたし。めっちゃ関西弁だらけなんも、久しぶりで楽しかった」 「そっか。良かったなー」 「雅己と行けたら、もっと良かったけど」 「――――……」  隣の啓介を見上げて、視線が合うと、笑ってしまう。  「いいよ。今度一緒に大阪行こ。 啓介が好きなとこ、連れてってよ」  言うと、啓介は嬉しそうに笑う。 「連れて行きたいとこ、めっちゃある。ばーちゃんにも会わせたい」  そんな台詞に、ふ、と笑んでしまう。 「いいよ。会いに行く」 「京都とか奈良も一緒に旅行しよか」 「うん。しよう。すげー楽しみ」 「ん」  ふ、と笑う啓介。  それを見ながら、自分が内心、めちゃくちゃ喜んでるのが分かる。  なんか、啓介、すごく久しぶり、とか思ってしまう。  久しぶりなわけではないのに。  昨日の朝会ってたし。  ほんと、意味わかんないなあと、自分でも思いながら。  でもやっぱり、嬉しい。 「啓介」 「ん?」 「皆と行くとこのさ、旅行雑誌買ったんだ」 「そうなん? もう見た?」 「うん、今日午前中買って、午後見てた」 「いいとこあった?」 「色々あったよ」 「ほしたら後で一緒に見よ」 「うん」  頷いて、啓介を見上げる。  楽しそうに笑ってくれるのが、やっぱ、嬉しい。  ポンポン返ってくる、言葉も。 「なんかさ、啓介」 「ん?」 「オレ、ずっとお前が横に居るのに、慣れちゃってるかも」 「んー?……どういうこと?」 「そのまんま。 慣れすぎちゃってて、居ないとすっごい静かだった」 「――――……」  啓介はちょっとだけ首を傾げた後、その手で、オレの頭をぐりぐり撫でながら、肩を抱いた。 「――――……寂しかったん?」  囁かれて、咄嗟に対処しきれなくて、かぁっと赤くなる。 「……し、ずかだったって、言った、だけだし」  言うと、啓介は、じっとオレを見つめてから。  口元、手で押さえて。笑ってるし。 「つか、笑うなよ」  少し啓介を離させてから、言うんじゃなかったと、むくれていると。 「――――……めっちゃ嬉しいけどな」  オレを見て、嬉しそうなので。  何だか、すっごい、照れるし。  なんか、あれだなあ……。  少し離れると――――……ちょっと新鮮。  ……ていうか、昨日の朝以来だってば。  自分にツッコミを入れてしまう。  

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