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「しょうがない」

 たまに行く回転寿司のお店のドアの前。 「あれ?」 「え?」  大学の友達たちが男子二人、女子二人。ばったり鉢合わせて、皆が啓介とオレに話しかけてきた。 「皆、どーしてここにいるの?」 「今日ずっとフリータイムでカラオケ行ってて、今からご飯」 「あ、そっか、言ってたね」  そう言えば、誘われてたっけ。 「ちょうどいいや、一緒に食おうぜ」  言われて啓介を見ると、ええよ、と笑うので、皆で一緒に座ることになった。  お寿司が回る側の席に、啓介と向かい合って座って、オレの横に男子二人、啓介の横に女子が二人座った。 「四人でいってたの? カラオケ」  オレが聞くと、「いや、違う。十五人位」と返ってきた。 「あは、楽しそ。今度行く」 「あれ、今日は何で来れなかったんだっけ?」 「あぁ、ほんとは、色々買い物とかしたりやることあったから断ったんだけど。結局行けなかったんだけどね」 「オレが法事で大阪帰ってたからな」  啓介がオレに続けて理由を言うと。 「じゃあ雅己だけ来ればよかったのに、カラオケ」  そう言われて、確かに、と気付く。  完全に忘れてたし……なんか啓介が居なくて、なんだかやる気があんまりしなくて。完全にまったりモードになってたし。  ……全然外に遊びに行くとか、浮かばなかったんだよなぁ。  浮かべば、カラオケの事も思い出したかも。 「……そうだね、でも完全に忘れてた。なんかすげーのんびりしちゃった」  そう答えると、皆がクスクス笑う。 「また今度いこ」  言われて、うんうん、と頷いてから、「何か頼むなら言ってー注文するし」とタッチパネルを見上げる。  啓介が目の前でお茶の茶碗を出して、粉茶を入れ始める。 「お湯入れてくね」 「ん」  啓介が粉茶を入れるその茶碗にお湯を入れて、皆に渡していく。  それを見てた女の子が、そういえば、とオレ達を見た。 「二人って一緒に暮らし始めたんでしょ?」  隣の女子に聞かれて、啓介が、ん、と笑ってる。 「仲良しだよねぇ。高校の時から仲良しって聞いたよ」 「誰に聞いたん?」  クスクス笑って啓介が話してるのを聞きながら、オレはオレで隣に話しかける。 「何食べる? 取るよ?」 「あ、そのマグロー」 「オレサーモンとって」  はいはい、と取って渡していく。  皆のお寿司を取りつつ、注文もとりあえず済ませて、皆で食べ始める。 「あれ、そういえば十五人も居て、食事は四人なの?」 「なんか話がまとまらなくてさー。回転ずしが良い奴と、お好み焼きが良いやつと、焼き肉が良いって奴らで、ばらけた」 「何やそれ」  啓介が笑って突っ込んでて。オレも笑ってしまうと。 「十五人もだと、中々この時間まとめては入れねえじゃん?」 「あ、なるほどね」 「その内、皆が酒飲めるようになったら、貸切とかで予約して飲み会とかしてみたいよな?」 「うん、いいね。楽しみ」  あれこれ、とりとめもなく皆で話しながら。  何となく皆食べ終わり、デザートタイムになる奴も居て、まったりしてる。  啓介が、隣の女子と楽しそうに話してるのに、ふと気づく。  まあさ、啓介、見た目もカッコいいんだけど……。  ……関西弁って、やっぱりモテる、て気がする。  カッコイイよねって言われてるのよく聞いてきたし。  オレもカッコいいなって、言った事ある気がするし。  なんかいま。……ちょっと二人に、なりたいかも。  皆と、話すのは楽しいんだけど。  ……あれ?  でもオレが、女の子に妬くのはおかしいのかなあ……。  啓介はオレを好きって言ってるし。  ……もしかしてオレは、男に妬くべきなのかな?  ……むむ? よく分かんないな。  啓介はオレと別れたらきっと男じゃなくて女の子だよな?  違うのかな。  ……男もあり?  …………うーん。オレが、妬くとしたらどっちになんだ?  むむむ。  考えるほどによくわかんね。 「……そろそろ帰ろか、雅己」 「え?」  急に言われて、まっすぐに啓介を見つめると。 「オレ、大阪から帰ったとこで疲れてんねん。悪いけど、帰るわ」  啓介がすごくはっきり言うので、皆はすぐ了解で。  ざっと計算して少し多目に置いて、二人で先に店を出た。 「帰ろ、雅己」 「ん」  店を出た所で、啓介が笑ってオレを振り返るので、すぐ隣に並んで、啓介を見上げる。 「急にどしたの?」 「雅己、帰りたそうやったし。……オレも、早く二人になりたかったし」 「――――……」  オレもって。  ……それだと、オレがまるで、啓介と二人になりたがってたみたいじゃん。  そう思うとちょっと恥ずかしくて反論したくなるのだけれど。    ……まいっか。  と、すぐに飲み込んだのは。  ――――……まあ今日は。  帰ってきて隣にいるのが嬉しいから。……しょうがないかと、そう思う。  

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