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「勝てるもの?」

 結構皆が選手権に参加して、頑張っていたのだけれど。  結局啓介がダントツ一番だった。 「なんな訳ー、さらっと、一番」 「はは。才能?」 「腹立つー!」  啓介がけろっとして笑うと、男子皆で、そう騒いだ。  ……特に騒いでたのは、オレだけど。  だって、すっごいやりたがってたオレよりも、全然もう、さらさらっとやって、平気でダントツとか、ムカつくし!!  こういうとこ、ムカつく。  むかむか。  理不尽だとは分かってるけど、プンプン怒っていると、啓介は、ンなことで怒られても、と笑ってる。  その笑いすら、余裕で余計、イラっとするけど。 「先輩、カッコいいですね、相変わらず」  若菜が啓介の隣にすかさず行って、キャビキャビしてるのも、これまた、イラっと……。  いや。しないしない。  若菜が啓介を好きなのは、知ってる。前から。  こないだバスケした時だってずっと張り付いてたし、変わらずそうなんだろうと、分かってた。  でもって今回この旅行が決まって、最初啓介は男だけ誘ってたらしいけど、結局女子にも連絡がいっちゃって、来るってなった時点で、まあある程度覚悟はした。  啓介にも、今はもう大丈夫、とか、言ったし。  ……きっと若菜は、この旅行、チャンスとか思ってるんだろうし。  まあ、その気持ちは分からなくはない。  だから、別に……若菜が啓介の近くにいって、キャピキャピ楽しそうにしてようが、それを啓介が、楽しそうに話してるように見えようが。  ……オレは、怒んないんだもんね!  …………という考え方が、すでに怒っているような気がしないでもないけれど。  いやいや、オレが怒ってるのは若菜じゃなくて、何回水面を跳ねるか選手権で、啓介がサラッと優勝しちゃったことだし。  もうほんと、そういうとこ、あるんだよね。  高校ん時からだけど。  すごく一生懸命やってる奴より、あんまり興味無さそうにさらーっとやった啓介が、上手にできちゃうとか。はーやだやだ。 「要、あとで、練習しにこよう」  こそこそと、要に言うと、要はプッと笑った。 「いーけど、啓介に勝ちたいって話なら、ダントツだから厳しくない?」 「いや、絶対コツがあるんだよ、あとで、ネットで検索しよ」 「いーけど……」  クックッと笑って要が頷く。 「ていうか午後バスケなんだから、バスケで勝負すれば?」 「まあそうなんだけど……」  バスケで勝負したって、勝てるかどうか微妙……。  実力重視のバスケ部で、キャプテンなったのあいつだしなー。  ……ていうか、オレって、啓介に何か勝てるものあったっけ??  と、唐突に、そんなことを考え始めた。

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