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「ポンポン」

 皆の居るところにもう少し、というところで、オレはふと思った。 「あのさ、啓介」 「んー?」 「……今決めたことさ、それでいいんだけどさ」 「うん?」 「もし、それ以外にも、オレがお前の嫌なことをしてたらさ」 「?」 「ポンポン叩いて知らせて?」  そう言ったら、啓介は面白そうに笑いながら、オレを見つめた。 「どこをポンポン?」 「どこ……肩、とか??」 「分かった。ほしたらそれ、お前もな?」 「ん、分かった」  何だかこんなこと話してるのも、おかしいなあとも思うんだけど。  前回、バスケした時、オレも啓介もそれぞれちょっと嫌な思いもしたし。  ……こういうの、話して、嫌な思い、しないようにできるなら、それはそれで、進歩なような。  って言っても前の時とは、関係も大分違うけど。  オレが、啓介のこと、好きって認めてるだけで、かなり違うから、大丈夫なのかもしれないけど。  でもなあ。男女のカップルだったら、バスケの皆に、付き合うことになったよーって発表できるけど、さすがにそれはちょっとなあって気がする。  オレ達が今ここで、付き合ってます、なんて言っちゃった日には、もうこの旅行、その話題しか無くなっちゃうって気がする。 「……まあ大体、オレの方が嫉妬するもんな」  啓介が苦笑いで言って、オレを見つめる。  ……まあ。確かに、口に出すのは、お前だけど。  オレも大概だと思うけどなあ……。 「とりあえず」 「ん?」 「オレは、帰るまでにお前に勝つから」 「ん??」  きょとんとした顔でオレを見て、それから、啓介はクッと笑いだした。 「もしかして、石投げ?」 「そうそう!」 「ほんまお前、おもろ……」  クスクス笑いながらの啓介と、ちょうど皆の所に追いついた。  すると、なんとなく皆がオレ達を振り帰った。 「なんかさー、あっちの階段に出店があって、射的とかできるらしいよ。行く?」  そんな声に、「行く行く行く!」と返事をして、急いで歩きだす。 「どんだけ射的好きなの」  先輩たちにも笑われながら、先頭で向かう。 「だってやりたいよね、めったにできないしさ」 「まあそうだけど」 「何を取るんだろ、射的で」 「お菓子とかかな??」 「まあなんでも。射的出来ればいいや。早くいこいこ」  ふと、振り返ると、啓介のよこには、若菜が並ぶ。 「――――……」  大丈夫。  若菜が啓介を好きなのは分かるけど。啓介がそこに行くとは思わないから。  ちょーっとだけ、ぴく、てするけど。まあそれくらいは。  多分、前の時と違うのは、啓介がオレをほんとに、好きなんだって思えてるのと。  オレも、そうだって、思えてることなんだと思う。  と。オレの隣に、沙希がやってくる。  この子、オレに、「もし私が大学生になっても、まだ彼女居なかったら付き合って下さい」とか言ってたけど。受験の時は無理です、とかきっぱり言ってたから、ふざけてるのがほとんどなんだろうけど。  まあ、仲は良いからよく近寄っては来るけど。  まあ。  ……たまには、いっか。  啓介とオレ、いつも一緒に居すぎだから。  二人でそれぞれ色んな人と過ごすのも、新鮮かもしれない。   

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