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「射的」

   階段の脇のスペースに小屋みたいなのがたくさん並んでて、その内の一つが射的だった。一緒に五人まで出来るみたいで、先に辿り着いた皆でお金を払って、射的の銃に触れた。ちょっと楽しい……。  弾の詰め方と、打ち方のレクチャーを受けて、一人十発。  それぞれ撃ち始める。五人以外は、小屋の外から覗いてる。啓介も覗いてて、「がんばれよー」とか、言ってる。  お菓子もあるけど、日本風の和柄のおもちゃみたいなのもあって、ちょっと景品も楽しかった。 「先輩、これやってもらってもいいですか?」  隣でチャレンジしてた沙希が、弾が硬くて入れられないみたいで呼びかけられた。 「いいよ」  弾を詰めて、ぎゅ、と力で押す。 「これ結構硬いよね」 「ありがとうございます」  嬉しそうに言う沙希に、ん、と頷く。  ああ、そっかーと、ふと思う。  女の子とだと、やっぱり、オレの方が力強いんだよな。  啓介とだと、圧倒的に筋肉の差で、負けるから、オレが何かをやってあげるとかがないってことに、ふと、気付く。  ちょっと頼られるとかは、テンションがあがる。  たまにはいいなあ~なんて思いながら、自分のと沙希のを弾を詰めながら、撃っていく。 「――――……」  あの万華鏡みたいなのが欲しいんだけどなぁ……。  久しぶりに、万華鏡の中を覗いてみたい。昔見たのは、すごく綺麗だった気がするんだよね。  ……と思ってたんだけど、狙ってるそれじゃなくて、隣のお菓子と、紙風船のおもちゃに当たって、落ちた。  結局、二つゲット。  意外と皆当たってなくて、参加賞の飴玉貰ってたから、オレはまあ、落ちただけましなんだけど。  でもなあ、万華鏡ほしいから、も一回、やろうかなあ。  と、思いながらも、次を待ってた五人と場所をチェンジ。  啓介と若菜も一緒に並んでる。  ……あそこはもう、若菜が啓介の隣を陣取ってるから、もはや必然って感じの並びだな。  意外なほどに穏やかな自分の心の中に、まあ自分で少しほっとしながら、オレは、啓介たちの射的を見守る。 「雅己先輩、紙風船が当たったんですね」  沙希に話しかけられて、ん、と頷いた。 「懐かしいよね。旅館行ったら、ふくらませてみる?」 「そうですね。すごい懐かしいです」 「オレ小学生位が最後かも、紙風船触ったの」 「そう言われてみたら、私もそれくらいかも。触る機会、あんまりないですよね」 「紙風船って、割れるんだっけ?」 「強くたたくと割れちゃうんじゃなかったでしたっけ?」 「オレ小学生だったから、なんか速攻割れてたような記憶が……」  そう言うと、沙希が「なんか先輩らしいですね」と、楽しそうに笑う。 「どういう意味だか聞いてもいい?」 「いえいえ。深い意味はないですよ」  クスクス笑われて。  紙風船、割りそうって思われてるんだろうな。まあイメージそのまんまで合ってるけど。  なんて思うと、なんだかおかしくて、オレも笑ってしまった。  

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