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「ソフトクリーム」
ご機嫌のまま皆のところにたどり着く。
「うまそー」
オレが言うと、啓介は呆れたように笑う。
「今から戻ったらバーベキューやて言うてるんやんか」
啓介はそう言うと思ったけど、皆が食べてるとすごくおいしそうに見える。
「オレも食べるー」
わーい、と味を見に行こうとすると、啓介が「雅己もか」と笑う。
「すぐ飯やで?」
「ソフトクリーム食べても全然平気。啓介も食べようよ」
「オレはええよ」
「一口食べたら?」
オレが仲間に引き入れようと誘い続けていると、苦笑い。
「……何買うん?」
「食べるなら一緒にえらぼ?」
一口なら食べるんだなと笑いながら、啓介の腕を引く。
「どれ?」
「ええよ、雅己が好きなので」
「じゃあ……チョコとイチゴとサツマイモ、はい、どれ?」
「……サツマイモ? あんま食べたことないよな気ぃする」
「りょうかーい。待ってて」
列に並ぶと、前に立ってた良と目が合う。
「良、何食べんの?」
「オレはチョコにしようかなーと。ミックスにしようか迷ってますけど」
「ああ、良いね、うまいよな」
「チョコミックスにするんですか?」
「ううん。サツマイモ」
「あ、そうなんですね。サツマイモのソフト食べたことないかも」
言いながら良も、メニューを見つめている。
「モンブランみたいな感じですかね?」
「んー、オレも初。啓介がそれが良いって言うからさ」
「雅己先輩が食べたいんじゃなくて?」
「ん? ああ、一口いる? て話してたから」
そう言うと、良は、クスクス笑い出した。
「普通そういうのって、先輩が食べたいものを買って、それ食べたいならあげる、とかじゃないんですか?」
「ん? ああ……まあ。そう?」
「そうだと思いますけど」
笑いながら言った良が、お店の人に、次のお客様ーと呼ばれて、進んだ。
ふと、中途半端で置いて行かれたオレ。
……そっか。
――――……まあ普通は、そうなのか。
一緒に買う訳じゃないし、普通は味はオレが決めるとこか。
ふむふむ……。そう言われてみれば。
あれだな、毎日一緒に居すぎて、全部のものが共用みたいな……。
まあ個別の持ち物は共用してるわけじゃないけど、なんとなく食べる物とか飲み物は、一緒にしてるって感覚が……。
そっか、これって、普通じゃないのか。
ちょっと突然の、目から鱗な事態。
……そんな大したことはないのかもしれないけど、でもなんか。
そこまで、オレ、啓介と全部当たり前のように一緒なんだなと思い知る。
「次の方―」
呼ばれて、サツマイモを頼む。
……オレが食べたいものの三つの中にサツマイモがあってその中からどれでもいいなと思ってた。で、啓介が珍しいからってサツマイモに決めた。
……でも、そんなこと、普通はしないのかぁ。
何だか不思議な気分になりながら、ソフトクリームを持って、先輩たちと話してる啓介の元に向かう。
「んー、啓介ー」
差し出すと、ぱく、と啓介が食べる。
「どう? うまい?」
「んー……もう一口」
言って、ぱく、と追加で食べられた。
「ああああー、食べすぎ―! 一口って言ったじゃんー」
「飯前やから、半分食べといてやった」
「食べといてやったじゃないよー! もー!!」
怒ってるのに啓介は、クスクス可笑しそうに笑ってる。
それを目の前で何となく見てた先輩たちが、ぷは、と笑い出した。
「相変わらずめちゃくちゃ仲良いなあ?」
「ほんと。ていうか、ますます仲良しじゃね?」
「今オレ、ソフトクリーム取られて怒ってるんですけど」
ムカムカしながら言うと、先輩たちはますます笑う。
「だからー、普通ソフトクリームなんて、人に食べさせねえよなっつー話」
「え?」
「なんかモロに口付けるしなあ? しないよなー?」
「……しないって」
オレは、思わず啓介に助けを求めて、そう言うと。
啓介は、ぷ、と笑い出しながら。
「早よ食わんと、溶けるで?」
そう笑った。
……こいつは、マジで、気にしてないな。
ソフトクリームを食べながら、この旅行中は、啓介と飲み物と食べ物を共用するの、控えようかなぁ……とちよっと思ったりする。
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